61-お弁当。
「やっぱり……?こうなったら今度なんか考えとこう。10個くらい!期待しててよ」
「変なことじゃなければ歓迎ですよ」
料理とかはやめてほしい。礎は蘭ちゃんだけで十分。
「じゃあ最近わたし料理始めたから今度もってくるね」
言ったそばから地雷がでてきたよ。冗談じゃないよ。
「いやいいです。僕まだ死にたくないので」
「酷くない?ちゃんと作れるようになってるからね?」
ほう?情報によると目玉焼きは焦がさないようになったと聞いたが。
今はどれだけ進歩してるんだろうか。
「なに作れるんですか?」
「ふふふっ。聞いて驚かないでよ?料理の本買ったんだけどなんと5ページ目まできてます!」
いやなに作れるか聞いてんのにページ数で答えられても普通わからないんですけど?
てかあの本買ってから結構経つけどまだ5ページ……?
「いやなにを作れるのか聞いたんですけど?きんぴらごぼうですか?」
確かにきんぴらごぼうだった気がするけど……。それとも生姜焼きだったか?
「え、後輩くんきもちわるっ。なんでわかったの?」
あ、先輩はあの日のこと知らないんだった。
「簡単な料理っていったらそういうのかなって」
危ないただのやばいやつになるところだった。先輩は馬鹿だから誤魔化せるはずだ。
「本当に?怪しいなぁ。まぁいいか、そんなわけだからもつ5個は最低限作れるの」
「全部丸焦げとか砂糖と塩間違えてヤバい味とかじゃ?」
「それは作れるとは言いません。あともうそんな時代は卒業しましたよ」
そんな時代あったのは認めるのか。潔いんだが悪いんだか。
「そうですか。食べ物になってるならいいですよ」
蘭ちゃんに毒味だけしてもらいたいな。頼んでみるか?でもかわいそうだなぁ。
「よし!言ったね?じゃあ今度お弁当持ってくるから!!」
ん?話が読めないぞ。お弁当?つまりその日はお昼抜きか?
「なんで急にお弁当なんですか?ここで食べればいいじゃないですか」
「おかずだけここで食べるのいやだよ。てゆうかケーキの時間が台無しになるよ」
自分の料理の評価をそんなに低く見てるなら人に食べさせようとしないでよ……。
「でも僕購買派なんで……」
「お金浮いてよかったね!」
屈託のない素晴らしい笑顔でこちらを見てくる先輩。これはもう逃げられないのかもしれない。
「いやでも作るの朝ですよね?先輩に迷惑かけるわけにいかないじゃないですかー」
「自分の分も作るから問題ないよ?」
「量が増えると時間かかっちゃいますよ」
「1つも2つも変わらないよ」
押し売りのセールスか!なにを言っても聞かない。こうなったら路線を変えよう。
「じゃあ僕おかずたくさんないと食べれない人なんでおかず7品以上お願いしますね?」
こう言っておけば作れるのが増えるまでは安泰のはずだ。
「7って容器に入るのかな……」
「冷凍食品なしですよ?」
「えー。それはめんどくさいなぁ」
よし、いい感じだ。
「それじゃあ諦めるしかないですね」
「いや!諦めないから!記念すべき大事な後輩くんに貢献する第1回目なんだよ!」
ダメだったか……。これは諦めて享受するしかないらしい。もしものために胃薬持ち歩いておこうかな。
「わかりましたよ。いつか楽しみにしてますよ。できれば卒業後に希望ですけど」
「どんだけ食べたくないのさ……。普通に美味しいの作れるんだからね?蘭だって味見させてるし!」
それ本当?蘭ちゃんから美味しいって報告一切ないんだけど……?
「蘭ちゃん美味しいって言ってたんですか?」
「不味いとは言ってなかったよ……」
あっ、なるほどそういうことですか。一瞬で察した。でもまあそんなすぐじゃないだろうし、それまでに先輩が忘れてくれることを祈ろうかな。




