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60-役立たず。


 次の日。


「中身変えてみました」


「美味しい!」


 また次の日。


「配分変えてみました」


「美味しい!」


 わかってたけど、先輩は役に立たない。

これは他の人に意見もらった方がいいかも。

明日蘭ちゃんくるし聞いてみるのもいいかな。


「先輩って役に立ちませんね」


「どこが?!役に立ちまくりな先輩じゃん。わたしって後輩くんより長生きしてるんだよ!」


 先輩なんだから当たり前じゃ……?


「でも美味しいしか言いませんよね」


「だって美味しーんだもん」


「別に先輩に美味しいって言って貰うために作ってるんじゃないんですが……」


 そりゃ少しはそうなんだけど今は試作だから意見が欲しい。


「わたしは後輩くんのを美味しく食べるために生きてるようなものなのに」


先輩は音楽に生きてくださいよ……。本業があるでしょうに。

そういえば最近バイオリンの音を聞いてないな。もう最初からケーキのスタンバってるし。


「先輩。バイオリン弾かないんですか?」


「まぁぼちぼちと」


「大会ってもうそろそろじゃ……」


「いーのいーの!なんとかなるって」


 あの顔は絶対大丈夫じゃない顔だ。


「本人がいいならいいんですけど、負けてもしらないですよ」


 ちゃんとみに行く予定だから結果は誤魔化せないですよ。当日に結果が出るのかはわからないけど。


「後輩くんが愛情たっぷり込めたケーキをくれたら余裕かな!」


「そんなもんはない」


 先輩に込める愛情なんてこれっぽっちもない……はず。


「えーもうちょっと先輩を労わるべきじゃないのー」


「愛情込めるのと労わるのって全然違うじゃないですかー?」


「ならなに?友情込める?とか」


「それもなんか違う気がしますけど、どっちにしろ先輩にかけるものはないと思いますよ?」


「そういうところが労わりが足りないっていうんだよ!!」


「じゃあ先輩も後輩をもっと丁寧に扱うべきですね」

 丁寧?なんか違う気がするけど……。

なんだろう可愛がるってのも違うし。


「それならもうとっくのとうに特別扱いだから大丈夫だ」


 特別扱いされたことはないつもりだけど。

なんかそんな扱いされてる?ケーキを貰ったり家に押しかけたり、確かに特殊な扱いとも言えるかも。


「なんかされてますか?特別扱い」


「してると思うよっ!まぁ他の男子と絡むことが無いから違いがわからないけどね」


 先輩の基準じゃ参考にならないじゃん。でも普通絡むことないような先輩とこうやって絡んでるのって特別扱いか?


「あてにならないですねそりゃ」


「まぁまぁ、大事な後輩くんなのは確かだよ。ん〜美味しかった、ご馳走様でした」


 先輩にとって大事なのは後輩じゃなくてケーキだよね。


「大事な後輩になんかしてくれないんですか?毎日毎日ケーキ食べてるだけじゃないですか」


 箱からおかわりのケーキを取り出して紅茶を入れ直しながら指を突き立て、左右に振りながら得意げな表情で反論してくる。


「ちっちっちっ。わかってないなぁ〜後輩くんも。わたしだっていろいろ後輩くんに貢献してるじゃないの。例えばほら……あれ?んー、えーと……」


 さっきまでの得意げな表情が一瞬で険しい表情になりぶつぶつと唸りだした。

考えても出ないんじゃないですかね?捏造しない限りは。


「もしかしてわたし迷惑しかかけてない?」


 そっちの方は思い当たることが多いのか指を折って数えてる。今更すぎるけど……。

一応フォローはしておこう。


「そんなことないですよ。確かに迷惑ばっかかけられてますけど、いいことも……。特にないですね」


 フォローしようと思ったのに出来るようなことがなにも過去に無かった。先輩の自業自得だ。




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