59-高級ケーキ。
「よっしゃー!後輩くん!頑張るよ!」
次の放課後物凄いハイテンションな先輩が誕生していた。
突然どうしたんだろう。ケーキの拾い食いでもしちゃったのかな?
「何で先輩がそんなにやる気なんですか?」
「やるからには1番でしょ!ほら早く試作出してよ」
食べたいだけか?それとも……。
「先輩昨日先生になんか言われましたか?
それを聞いた瞬間さっきまでのテンションが嘘のように動きが止まる。
「ソ、ソンナコトナイヨ」
はいびんごー。何言われたんだろう、勝たないと単位取らせないとか?
「言ってくださいよ」
「笑わない?」
「くだらないことなんですね」
「違うよ!!めっちゃ重要な事だからね!」
「だからなんなんですか?」
「買ったら先生が高級店ケーキ買ってくれる」
「そうですか……」
高級ケーキを想像してるのかうっとりとした表情で遠くを見つめている。
大会が高級ケーキのダシにされてるのはなんか癪だけど、その方が先輩が本気になるからなんとも言えない心境だ。
「心配しなくてもちゃんと後輩くんの分もあるからね!」
別に心配なんてしてないんだけど?まぁ、貰えるものは貰うけど。
「先輩がやらかすところまで未来が見えますよ。よって高級ケーキはなしですね」
「何言ってんの〜わたしは出来る子だからね、負けたら後輩くんのケーキのせいよ?」
「言いがかりはよしてくださいよ」
ケーキで勝てるほど上手くないから先輩のせいにしようと思ったのに。計画が台無しだね。
「食べれなかったら後輩くんに買ってもらうからね!」
「コンビニのケーキでいいなら買ってあげますよ」
「いいわけないでしょ?!1つ1300円もするケーキだよ。そんなにそこら辺で買える2、300円のケーキと一緒にしないでよ」
1300円?!1つで普通に3.4個買える値段じゃん。どんだけ美味しいケーキなんだ……。
「あ、もしかして後輩くんも食べたくなってきた?」
顔に出てたのか先輩がにやにやして指で頬をつついてからかってくる。
そういうのほんとドキドキするからやめてって。
「やめてくださいよ」
「いいじゃん。後輩くんの肌すべすべすぎて羨ましいー」
「次してきたら噛みますからね」
「うわー後輩くんこわーい。それじゃケーキ食べよ?紅茶無くなっちゃうよ」
入れ直せばいいじゃん。
箱からケーキを取り出してお皿に乗せる。
「食べますか」
「今日もこれ?」
「基本的に試作だからこれですよ。少し変わってますけどね」
改良型試作1。これから何回変わるのかな。
「何変わったの?」
「食べたらわかると思うんですけど、中の層の内容とスポンジの味と上の飾り付けをいじってみました」
オレンジのジャムを抜いて代わりにイチゴクリームを入れてみた。
上のオレンジもカールさせて蜜柑を中に乗せて真ん中に移動させた。
「わたしに分かるのは美味しいか美味しくないかだけだからなー。いただきますっ」
先輩は砂糖が入ってればなんでも許される説ある。
イチゴ感は増したけど、なんかただのイチゴチョコイチゴチョコって感じがして面白くない。
「美味しいー。でもこれって普通の後輩くんが作るのとそんな変わらないね」
わたしは美味しければなんでもいいんだけどねー。とどんどん頬張っていく。いや、頑張るんじゃなかったのか……?
でも先輩でもやっぱり普通な感じはするんだ。どうしようかなぁ。
「味を取れば見た目が、見た目を取れば味が。ね……」
なかなか難しい。
「でも最初のやつの方が美味しかったかも?」
「また帰ったら考えてみます」
「それじゃ明日もケーキ待ってるね〜」
食べるだけならせめてまともな意見を言って欲しいものだ。




