56-入場料。
「ってなわけで毒味してください」
「いただきまーす!」
フォークを刺そうとして固まった。
どうしたんだろう?
「後輩くんこれどうやって食べるの 」
「フォークで口に入れて咀嚼して嚥下して食べます」
「フォーク刺すところがないよ?」
「やっぱり邪魔ですか」
見た目はいいんだけどなー。
「先に食べればいいけどね」
手で摘んでボリボリと食べ始めた。
それだけで食べてもそんなに美味しくないと思うんだけど?
砂糖とかまぶしたほうがいいかな?
「改めていただきまーす」
あ、それの感想は無いんですね。
先っぽの方だけを掬って口に運ぶ。
まずは真ん中の無しでも美味しいのかどうか。
「ん〜!んー?んー……」
え、なにその反応?!新しい反応だ。
もしかして不味い?
「どうかしましたか?」
「いやオレンジだと思ったら蜜柑だったなって」
「味は?」
「んーイチゴ?が全然わからない気が」
「生地だけじゃ少ないのかなー」
あんまり入れるスペースがないから生地をもう少し濃くするべきか。
中の方まで食べ進めてあっという間に完食した。
「どうでした?」
「んー。美味しいけど真ん中の凄く甘い」
オレンジのジャムのせいだろうけど、そんなに?たしかに他もぜんぶ甘いからなー。もっと皮も入れてマーマレードにして苦味とか出してみようか。
それとも酸味のがいいのかな?
「これってコンテストのレシピ?」
「そうですよ」
「いつなの?」
「9月12日ですね」
「え?東京だよね」
「そーですよー?確か何区だっけなぁ」
「えー、どーしよーかなー。んーでもなぁ」
突然ゆらゆらと左右に揺れ出す先輩。
たまにわけのわからない動きするよね先輩……。
「ちなみに入場料2000円かかりますからね」
「え?!なんで考えてることわかったの?!」
いやまぁ先輩のことだから来たらたくさんケーキを食べられるんじゃね!的な感じでしょう。
「先輩のことは何でもお見通しですからね」
さっき修学旅行のこと聞いたからね。
「ならスリーサイズは?」
知らないよそんなの!!どこで入手すればそんな情報手に入るんだ。
色々なものを失えば蘭ちゃんからとかなら聞けそうだけど。
「そーですね。上から80.80.80ですね」
80ってどんくらいかわからないけど。
「それじゃあもう筒じゃん!電信柱じゃないんだから!!正解は8……」
「言わなくていいから!!先輩もそろそろ羞恥心とかもってくださいよ」
ちょっと気になったけど流石に……。てか80台はあってるんじゃん、惜しかったね。
「別に知ったところで減るもんじゃないじゃん……」
「うるさいですよ変態。自主研修なのにどこか回らないんですか?てか友達と観光とかは……」
「へんたっ?!わたしはぴちぴちの未使用だよ!!純情だよ、ピュアだよ!!」
それはちょっと引いた……。
何言ってんだろこの人。
「そんな仲良くもない人と回って楽しくないしなぁー」
「だからってケーキ食べにくるんですか」
「だってたくさんの人作るんでしょ?食べ放題じゃないの!」
「普通に1人各1個だとおもいますけど……」
こっちに来るより東京のケーキ屋さん食べ歩いと思った方がいいと思うけど。有名どころかなりあるでしょ都会なんだから。




