55-同伴者。
次の日、週末じゃないのに珍しく学校の設備を借りて試作に励んだ。
まずはイチゴのスポンジケーキを焼く。
普段と同じように生地を作ってそこにイチゴのピューレとリキュールを数滴加えて混ぜ型に流して焼く。
チョコを細かく砕いてバターと一緒に湯煎にかける。メレンゲと生クリームを泡立てる。
チョコとバターが溶けたらふやかしたゼラチンを湯煎で戻し混ぜ合わせ生クリームを加えて混ぜる。
そこにメレンゲを2回に分けて入れる。
次に溶かしたチョコレートと泡立てた生クリームを混ぜ合わせてチョコクリームを作っておく。
オレンジの皮を剥いて果肉を取り出して鍋で砂糖と一緒に煮てジャムを甘さ控えめに作る。
グラサージュとみかんのピューレを合わせる。
焼いて冷ました生地を4等分にスライスして型に戻してチョコクリームを型に円を書いて絞っていく。
「内側と外側が同じ幅になるようにっと。結構固めに作らないとだれてくるな」
その上にオレンジのジャムをこぼさないように乗せていく。
後は隙間にチョコレートムースを流して上も覆ってしまう。
切ったら真ん中だけ層になってると思うんだが。
最後のにみかんのジュレを上にかけて冷蔵庫で少し冷やし固める。
「ここまでで30分かー。生地は一回で4ホール分できるから他の材料を4倍でつくって、8等分すれば32個?生地を二つ一緒に焼いたら64個。大体1時間くらいか」
実際はもうちょっとかかるかもしれないけど分速1個ならいいんじゃないか?
他の人たちがどんなのを作るのかわからないからなんとも言えないけどこんなんでいいのか?
でも冷やしたら上の飾り付けもあるからもっと遅いな。何載せようか?
「生クリームとみかんとチョコの板とか」
オレンジをオーブンで乾燥させたやつとかでもいいかも。やってみよう。
型から取り出して外側の縁に沿って生クリームを絞っていく。一周したらその内側にももう一本入れる。
ジュレにかからないように軽く粉糖をまぶして8等分に。
生クリームに模様が付いている薄いチョコレートの板を可愛らしく刺して缶詰のみかんを真ん中に2つ乗せて先の方にオーブンでパリパリにしたオレンジを丸い方を下にして斜めに差し込む。
「こんなもんかな。とりあえず完成」
写真を取って残りもオレンジの角度を変えたりして盛り付けていく。
見た目はだいぶいい感じになったと思うんだけど味はどうなのか。
口の中でカオスになりそうな見た目してるけど。
片付けをしていると誰かがドアを開けて入ってきた。
先輩かな?寄らない日は毎日確認しにしてんじゃないだろうな?
そんなことを考えていると声を掛けられる。
「よお、小鳥遊。やってるな」
「あれ?先生どうしたんですか?」
先輩じゃなかった。珍しいな。
「ここにきたら甘いものが食べられるって思ってな」
「生徒にたかりに来たんですか」
教え子にたかる先生とはこれいかに……。
「まぁ冗談だよ。用があって来たに決まってるじゃないか」
「どうしたんです?放送で呼び出してくれたら職員室にいったのに」
「ん、いや近くにちょうどいたからな。ついでだから気にすんな」
何の用だろう?成績悪かったとか。
「何の用なんですか?」
「あぁ、前話して貰ったコンテストの件なんだが」
あぁ、なるほどその話か。それこそ呼び出してくれればいいのに。
「はい」
「学校長の許可は降りたんだが、どうやら引率が必要らしくなー」
学校の行事でもないのに?なんでだろう。
「誰が引率してくれるんですか?」
「それなんだが俺がいくよ。ちょっと東京に行くから当日だけだが会場には最初から最後までいるつもり」
担任が引率ならありがたいね。知らない先生とか気まずすぎる。
「なんで東京にいるんですか?学校は?」
「2年次が修学旅行でその日自主研修なんだよ。それで一応手が空いてるから俺が行くことになったのさ」
「担任じゃないのに修学旅行って行くんですね」
「担当学年以外はてきとうに選ぶからな運だよ運」
運が良いのか悪いのか。
そんな事より2年生は修学旅行なのか。
先輩も東京にいるんだ。売り子してくんないかな?先輩にサーブは無理か。もういっそのこと先生にしてもらうとか。
「それよりもう1人決めたのか?」
「いや全然全く」
「うちの生徒から連れてくならそいつも休みにしないといけないんだが早めにしろよ?」
「わかりました……」
本当にどうしようか。レシピよりも難関だよ。
「それじゃ俺は戻るわ。ちゃんと片付けろよー」
「やっとレシピがひと段落ついたっていうのにまた別の問題がやってきたな」
とりあえず片付けて先輩のところいくか。




