54-贋作。
「なぁ中谷」
「ん?どした」
「茶碗蒸しって好き?」
「どうした突然。まぁ好きだけど」
「まぁちょっと色々ね。茶碗蒸しって何入ってんの?」
こっちにもいろいろあるんだよー。
「んー栗?椎茸、三つ葉にナルト、海老」
「なるほど」
「正直何入ってるか考えて食べないからそんなにおぼえてないぞ?」
「ありがとそれだけで十分だよ」
「なに、茶碗蒸し作るの?遂に料理まで極めるつもりか?」
「お菓子っぽい偽物を作りたいんだけどどうしたもんかなって」
「茶碗蒸しってお菓子ぽくなくね?」
「タルト生地に茶碗蒸し作ってタルトっぽくする」
「なるほど。でも美味しいのかそれ」
「作ってみなきゃわかんね」
「まあそうかがんばれよー。甘いものじゃ無いなら俺は要らないや」
薄情な奴だな今度勝手にやってやろう。
家に帰って試作をしてみる。
学校だと先輩が来ちゃうかもしれないからね。
まずは砂糖を抜きでタルト生地を作って軽めに焼く。
次に携帯でレシピを調べながら茶碗蒸しの液を作る。
「これをタルトに入れて焼けばいいのかな?うまくいくかな……」
半分くらい液を注ぎ入れてオーブンで火にかける。
その間にナパージュ代わりのゼリーを作る。
海老の殻をフライパンで炒めて水を注いて一煮立ちさせてクッキングペーパーで濾してゼラチンを加えてとろみがつくまで冷ます。
「すごい海老のにおいがするな……絶対バレるじゃん」
まぁ一応最後までやってみよう。
甘栗を適当にカットしておく。
焼きあがったタルトを取り出して栗を乗せて海老のゼリーを注いで冷蔵庫に入れる。
冷えたら取り出して食べてみる。
「なんか不味くもなく美味くもなく……?」
微妙だけどにおいは海老だ。どうにかして誤魔化せないかなー。
もう一度上から味がしないナパージュをかけてコーディングしてみようかな?
上に薄く垂らしてもう一度冷蔵庫へ。
その間にコンテストのレシピを考えよう。
正直こんなの作ってる暇は無いんだよね。
まだ時間に猶予はあるけど早めに決めとかないと練習する時間だけが減ってくからね。
子供とかでも食べやすいように小さめにして、そーだなぁレモンとか使いたいな。
あんまり時間をかけないで見た目を良くする乗って難しい。何層にもしてやるの厳しいし……。
容器を使ってパフェみたいにするとか。
全然アイディアが浮かばない。どうしたもんかな。
明日いろいろ試作してみようかな。美味しくなくても先輩にあげればいいし。
考えるのを一旦やめて冷蔵庫からタルトを取り出す。
においは……思ったよりしないな。
甘い匂いを箱につけとけば誤魔化せそう。蘭ちゃんにメールで写真送っておこう。
見た目は完全にタルトだと思うからいけると思うけど。実際食べると本当に微妙な味。
どうせなら美味しい方がいいんだけどこればっかりはなぁ。料理は得意じゃない。
しかもあと4日しかないからなんとかできるわけない。
まぁこれでいっか。別にメインじゃないしね。
これ一個だけ冷凍して解凍して渡せばいいや。




