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43-回向。


「蘭ちゃんは?」


「なんか用事あるからパスだってさ。酷いよねぇ」


 今酷いのは先輩だけどね?


「なら1人で行けばいいんじゃ……」


「それはちょっと面倒くさいというか……」


「先輩が行きたくて行くのに面倒とかないでしょうに……」


「いやーそうじゃなくてなんかたくさん話しかけられるんだよねー。何でだろう?」


 それナンパされてるって言うんですよ?

何言っても帰る気無さそうだ。


「諦める気は?」


「ない!」


 笑顔で言うな。

はぁ、仕方ないから出掛けるか。


「……準備する時間貰えるなら行きますよ」


「本当?!やったぁー。待つ待つ!」


「次からは突然来ても行きませんからね。中に入って待っててください」


「お邪魔しまーす」


 先輩を連れてリビングに戻る。

先ほど使っていたノートやペンを机の端にまとめ、冷蔵庫からお茶を出す。


「お茶です。適当に時間潰しててください」


「はーい。ごゆっくり〜」


 それはこっちのセリフだよ……。

ていうか普通に男の家にあがり込むって危ないからやめたほうがいいと思う。

あげてる側が言うことじゃないか。

部屋に戻って着替えを持ってシャワーに向かう。


「人が居るのにシャワーに入るとかなんか嫌だなぁ……」


 ささっと終わらせよう。

シャワーに入り着替えてドライヤーで髪を乾かす。


「どこに行くんだろう?」


 流石に無計画じゃないと祈ろう。

部屋に戻って財布やら何やらを持ってリビングに向かう。


「お待たせしました。あれ?先輩?」


 先輩の姿が見当たらない。

どこ行ったんだろう?

勝手に動き回る?普通。


「先輩ーどこですかー」


 冷蔵庫の中。

いない。


 トイレ。

いない。


 ゴミ箱の中?

いないな……。

どこ言ったんだろう。もう外出たとか?


「ん?ドアが開いてる。あそこか?」


 空いている扉に向かって歩き中を覗く。


「せ……」


 カーテンが閉められた薄暗い部屋には線香の赤い2つの点とドアと自分の隙間から差す微かな光に照らされる先輩の姿があった。

先輩は線香に火を灯し仏壇の前で目を閉じて手を合わせて座っていた。

ゆっくりと手を下ろし目を開ける。

するとこちらに気づいたのか立ち上がり駆け寄ってくる。


「準備終わった?」


「終わりましたよ。なんで大人しく待ってられないんですか……。子供ですか」


「長かったんだもん。まぁ細かいことは気にしないで行こ!」


 僕の手を掴んで玄関に歩き出す。


「そんなに慌てなくても」


「時間は有限だよー」


「まだ午前じゃないですか」


 玄関を出て鍵をかけて街へ向かう。


「それで今日は何処へ行くんですか?」


「んーなにしよ?」


「え?予定ないんですか。帰っていいです?」


「いやあるよ!あるけどまだ早いんだよ〜」


「急ぐ必要無かったじゃないですか……」


「せっかく行くんだから早いほうがいいでしょ!」


「することもないのに?」


「そ、それは着いてから考えるの」


 あさっての方向をに目線を泳がせ言い訳を始める。

本当に無計画だったよこの人は。

街に着くまでに考えてもらおう。


「着く前に考えておいてくださいね」


 先輩と出掛けるのは大変そうだ。




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