39-計画。
「まったく何ができるかわからない」
生クリームをボウルに入れてほんの少しだけ砂糖を加えて生クリームを泡だてる。少しだけ別に取り分けて2つに分けてそれぞれに先ほど刻んだチョコレートとレットカラントを落として均等に混ぜる。
冷めた生地を型でくり抜く。
くり抜いて余った生地とさっき別に取り分けた生クリームに砂糖を加えて先輩に渡す。
「はいこれ先輩。余りの部分あげますよ」
「ほんと?ありがと!おいしい〜」
早速生クリームにつけて食べ始めてる。
「答えわからなくてもこれで満足ですね」
「いや全然満足じゃないよ?!」
名前が無いものを答えるなんて無理でしょうに。
言ったら怒られそうだからいわないけどね。
お湯を沸かして急須にほうじ茶を淹れてお湯を注ぐ。
なんでこの学校の調理室には急須があるんだろ。使い所なくないか?
まぁ今使われてるけど……。
「後輩くん。はいー」
そんなどうでもいいことを考えてるといつの間にか先輩が隣に来ていた。
「なんですか?これ」
生クリームがたっぷりとついた生地を手に持って迫ってくる。
「あーん」
口に向かって伸びてくる。開かなくても付ける気らしい。
汚れるのは嫌なので口を開けて食べる。
「美味しい?」
顔を覗き込みながら笑顔で問いかけてくる。
「甘いです……」
「そっか!よかった!」
嬉しそうな顔で戻っていく先輩。
味なんて感じなかったけど覗き込んできた先輩は確かに甘い香りがした。
先輩の方を見ると美味しそうに生地を頬張っている。
本当に自由だな。
もう少し自分が可愛い自覚を持って欲しい。
「ねー後輩くん。そのお茶淹れすぎじゃない?」
あ、忘れてた。
コップに注いで先輩に渡す。
「はい。やりすぎたんで飲んでいいですよ」
「いいの?ありがとう」
急いて次のを淹れ直して仕上げにかかる。
マロンペーストの缶を開ける。
生地を円柱のプラスチックの型にはめて淹れたほうじ茶を軽く垂らす。
レットカラントの入った生クリームを乗せマロンペーストを乗せてもう一度生地を被せてチョコレート入りの生クリームを……。
「後輩くん後輩くん」
今大事なところなんだけど……。
「はい?なんですか?」
「こっち見てこっち」
「なんかありました?」
「ほら後輩くんの好きな太腿だよ」
スカートをめくって太腿を強調している。
もちろん座りながら。
「……」
生クリームの乗せて渋皮煮で作った方のペーストを絞る。
最後にほうじ茶の粉末を振りかけて完成。
「なんでスルーするの?!」
「え?どうしましたか?」
「後輩くんが喜ぶと思ったのに〜。そしてあわよくばそのお菓子を食べれるかと思ったのに……計画が台無し」
「答えが分からないからって色仕掛けですか……。相変わらず懲りないですね」
「何かわからないもんそれ」
「そんなことしてたら違うものも見えますよ」
「違うもの?大丈夫だよちゃんと考えてめくってるもん!」
「いや見えてますけどね?」
「え?嘘だー。からかったって騙されないよ?そんなことよりそれ食べていい?」
「分からなかったのに食べる気なんですか」
「いいじゃん!むしろそれなんなの?全く分からないんだけど」
「えーとこれ名前ないですねーてきとうに考えて作ったんで」
「後輩くん最近わたしのこといじめて楽しい?」
「いじめてるつもりはないですよ。まぁ正解がないんで答えないのが正解ですよ」
「なら食べてもいいよねー」
「片付け終わってからですよ」
「じゃあ洗い物手伝うね」




