35-待ち伏せ。
「分かった。職員会議で聞いてみるよ。詳しい日程は?」
「ありがとうございます。えーと確か9月の12日の水曜日ですね」
「じゃあ11〜13で公欠ってことで言ってみるわ。まぁお前なら多分大丈夫だとは思うよ」
「え?なんで僕なら……?」
思い当たる節がない。
「え?お前自覚ないの?1年でも職員室でも有名だぞ?」
「僕なんかやらかしました?」
全く身に覚えがない。
「いや、お菓子作ってる天才って割とみんな言ってるの聞くけど」
初耳ですが。天才はさておき、1年生の間ならまだわからなくないけどなんで職員室まで広まってるんだ……。
「いや聞いた事ないですけど」
「そうか?割と有名だぞ。学校の天才2人って。お前と2年の音羽と」
先輩なら分かるけど……。
「嫌な呼び名ですね」
流石に苦笑いが浮かぶ。
どうかそのまま2.3年に広まらないことを祈ろう。
「まぁとりあえず職員会議に通してみるよ。これコピーしてもいいか?」
「どうぞ」
入り口に置いてあるコピー機でコピーを始める。
なんで面談室にコピー機置いてあるんだ?
進路とかでも使うからかな?
「はい原本。それと読んだけどこれどうするんだ?」
資料の要項を指差して聞いてくる。
『売り子として一名同伴者を用意すること』
「まだなんも考えてないです」
正直悩みのタネだ。
「まぁまだまだ時間あるしゆっくり考えな。どうせなら可愛い子の方が売れるかもしれないぞ」
先生は笑いながらドアを開け職員室に戻っていった。
可愛い子以前に東京に知り合いはいないし、こっちから連れてくのも凄く申し訳ない気がするし。
可愛い子なら断然に先輩なんだけどなぁ。
そう思いながら廊下に出る。
「でも先輩じゃ無理そうだな」
「わたしがどうかした?」
しまった声に出てたか。
いやそうじゃなくて。
「なんでここにいるんですか、先輩」
「後輩くん居ないから後輩くんの友達に聞いたらここにいるって言ってたから?そんなことより何の話?ねぇ!私がどうしたのー?」
しつこい。こうなったら言うまで聞いてきそうだ。
「先輩はドジだって話ですよ」
だから接客とか出来なさそう。
「え?酷くない?わたしって居ないところでもディスられてるの??」
「褒め言葉ですよ」
1割くらいは。
「うそだ!もう騙されないからね」
「先輩はもう人を信じるという純粋な心を失ってしまったんですね」
「何でわたしがおかしいみたいになってるの……?」
「まぁまぁいつも通りじゃないですか。それより今日は何もないですよ?」
「ええーせっかく待ってたのに……」
「残念でしたね」
「戻って練習しよう……」
「頑張ってくださいね」
僕は返って寝ますけどね?




