33-おかわり。
今日はお店で買ったケーキです。
前に試そうと思ってたやつを実行しようかなって。
「先輩はお店のケーキでも作ったケーキでもコンビニのケーキでも気づかないんじゃないか説」
甘ければ美味しい。だったりしてね?
教室からはいつも通りバイオリンの音が鳴っている。
「いつも静かに入って文句言われるしたまには思いっきり開けてみようかな?」
ドアノブに手をかけて思いっき音を立ててり開く。
「ひゃうっ?!」
すぐにバイオリンの音が止まる。
やりすぎたかな?結構大きい音が出た。
先輩は驚い顔でこちらを見ている。
「どうしました?先輩」
「……。はぁなんだ後輩くんか。びっくりしたぁ」
「びっくりすることあったんですか?」
とぼけてみる。
「あったんですか?じゃないよ!心臓止まるかと思ったよ」
「大袈裟な……。普段気付かなくて文句言うから分かりやすく入ったのに」
「極端すぎるの!後輩くんは程度というものを知らないの?」
溜息をつきながら紅茶を淹れる準備を始める先輩。
「次は気をつけて入りますよ」
「これなら静かに入ってきた方がましだよ……。変な声出ちゃったし」
「今更じゃないですかそんなの」
「もう……。後輩くんなんてしらない!!」
「それは残念ですね。なら帰りますか」
帰ろうとすると腕を掴まれる。
「……お菓子は置いていけ!!てゆうか紅茶入れちゃったから飲んでって……。2つは飲めないよ」
「わがままですね」
「うるさいー。いいから早く食べよ」
やれやれ。本当に自由な先輩だ。
「はいはい。どうぞ」
紙皿に乗せて渡す。
街で買ったチェーン店のケーキ。
もちろん周りの透明のやつとかは剥がしてある。
「いただきます」
フォークを刺して口に運ぶ。
美味しそうに食べてる。
食べてる時はいつも顔が緩むんだよなぁ先輩。
2口目を食べ3口目を食べて止まる。
首を傾げる。そしてまた食べ始めてた。
紅茶を飲みながら美味しそうに食べ進めてあっという間になくなってしまった。
「ごちそうさまです」
「今日は静かですね」
「うん。なんか……?」
うんうんと唸る先輩。
「どうしました?」
もしかして気づいたのかな?
「なんて言えばいいんだろう。美味しいけど後輩くんの味がしないような」
僕の味ってなんだ?ちょっと気持ち悪い。
「後輩くん腕落ちた?」
「こんな短期間に落ちませんよ」
「だよねー。なら気のせいなのかなぁ」
先輩なかなか凄いかもしれない。
クリームとかが多分崩れないように色々入ってるからそこの違和感なのかな?
自分じゃわからないけど……。
「今日のケーキお店で買ってきたやつですよ」
「え?なんで手作りじゃないの!!?だからなんか違和感あったんだ」
「先輩ってなんでも美味しい美味しい言って食べるじゃないですか。だから気づかないんじゃないかなって」
「わたしのことそんな風に思ってたの?」
「だからいけると思ったんですけどね」
「よかったー危うく後輩くんにハメられるところだったよ」
自分を抱きしめてくねくねする先輩。
「誤解を生む言い方やめてくださいよ。でもよく気づきましたね」
「わたしの口は後輩くんに毒されてしまってるからねー」
何言ってるんだこの人は。
「なら浄化しないといけませんね」
空になった紙コップにおかわりの紅茶を注いであげる。
「あー!もう飲めないのに〜」
「頑張って飲んでくださいね」
「酷いよー後輩くんのいじわる」
「いじわるした記憶なんてないですよ」
「今!今してるでしょ!なうで!!」
「無くなってたからおかわりを入れただけですよ?親切じゃないですか」
「もう……。口だけは達者なんだから」
やっぱり先輩の反応が面白くてからかうのはやめられない。




