31-密着。
「臭い……」
辿り着いた頃には先輩はブルーチーズにやられていた。
「そっちは大人用ですからね。先輩にはまだ早かったですか」
独特な味だから仕方ない。
だからそんなに睨まなくても。
「こっちの方は大丈夫だと思いますよ?」
ブルーチーズの方を回収してホワイトの方を渡す。
「騙してない?」
どんだけ疑うんだ。
「おねぇちゃん食べないなら私もーらい!」
1つ手に取って口に運ぶ。
無言で食べる蘭ちゃん。
あれ?もしかしてこっちもダメだったかな?
先輩がジトッとこちらを見つめる。
「美味しくなかったら出し「なにこれ甘くて美味しい!!」
良かった。口に合わないのかと思ったよ。
すぐに2人で奪い合いが始まる。
巻き込まれないよう避難して椅子に座る。
「あら、ありがとう。スイカ切っちゃうわね」
「ありがとうございます。お願いします」
スイカが切り終わりまで姉妹の争奪戦でも眺めてよう。
「小鳥遊さん。楽しめたかい?」
先輩達の戦いを見守ってると声がかけられた。
「はい。ありがとうございます。久々にこんな賑やかな休日を過ごしました」
立ち上がって頭を下げる。
「座って座って。それは良かった娘達もあんなに騒いでるの初めてみたよ」
席について先輩達を眺める。
「お菓子に夢中で流石女の子ですね」
「小鳥遊さんのお菓子がそれだけ気に入ってるんでしょう」
「普通のお菓子なんですけどね。あ、これ良かったらどうぞ」
先ほど回収したケーキを渡す。
「ありがとう。いただくよ」
「お口に合うかわからないですけど」
「これは美味しい!ブルーチーズ……スティルトンかな?」
「よくわかりましたね。やっぱり大人の口には合いましたか。先輩には早かったみたいで」
「ワインが欲しくなる味ですね」
まぁワイン少しかかってますからね。
「赤ワインと合うと思いますよ。僕は未成年なんで呑めないですけど」
「これだけで食べるのは勿体ないね」
「それでしたらこれ余っちゃったんで良かったらどうですか?」
余ったチーズを取り出して広げる。
「流石にそれは申し訳ないよ」
「いえ、これだけだと僕も口に合わなくて食べれないんですよ。捨てるのは勿体無いんで貰ってくれると助かります」
「ならありがたく頂きますね。ありがとうございます」
これでチーズも消費できた。後はゆっくりジュース飲んでケーキを食べよう。
「お父さんなに貰ったの?」
後ろから首に手を回して飛びついてくる蘭ちゃん。
重くは無いけどびっくりするからやめてほしい。
それに背中に柔らかいものが当たってるし。
「蘭ちゃん離れて」
「あ、私重かったですか?」
「いや全然重く無いけど当たってるから」
「ん?あぁ、それくらい気にしないですよーほらほら」
押し付けてこないで。
蘭ちゃんってこんなキャラだっけ……?
「こっちが気にするの。お父さんからもなんか言ってくださいよ」
助けを求めて前を見るとそこには誰もいなかった。
あれ?さっきまで確かにそこに……。
嫌な予感がする。
「ねぇ蘭ちゃん」
「はい?もっと押し付けますか?」
いやそうじゃなくて。
「先輩とケーキ取り合ってなかった?先輩は?」
「……小鳥遊さん」
「ん?」
「死ぬときは一緒ですよ」
直後先輩が飛びついてきた。
なるほど蘭ちゃんのこれはお詫びだったのか。
なら最初からやらないで欲しかった。