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24-風邪。


 今日も教室から音が聞こえる。

同じ曲だ。練習頑張ってるなぁ。


 今日もバレないように静かに入る。

前回と同じように椅子に座り音を立てないように紙皿を用意してポットに水を注いでスイッチを入れる。

先輩を見ると全然こちらに気づいていないようだ。

あれ?マスクしてるけど風邪ひいたのかな?


 紙コップにティーバッグを入れてお湯が沸くのを待つ。

お湯が沸いたら紙コップに注ぐ。

その間に先輩がこちらに気づいて近寄ってくる。


「後輩くんって忍者なの?」


「そんなわけないじゃないですか。先輩が夢中になって気づかないだけですよ」


 不満そうな目でみられても……。


「もー本当に恥ずかしいからやめてよねー」


 そう言われてもね?別に悪くないし。

まぁ確かに演奏してる先輩の横顔は無防備で可愛いけど。


「まぁまぁそんなことより食べましょう」


「そんなことじゃないー!!」


 と言いつつ椅子に座って紙皿に手を伸ばしてるじゃないですか。


「先輩風邪ひいたんですか?」


「多分……」


「寝る時裸で寝たりしたんですか?」


 暑い〜。とか言ってやりそう。


「後輩くんいつもわたしをなんだと思ってるの?これでも一応女の子なんだけど……」


 自分で一応って言うのね。


「可愛い先輩ですよもちろん。それでなんで風邪ひいたんです?普通に夏風邪ですかね?」


「心にもないこと言って。それはちょっとね」


 割と本気ですけどね。


「心当たりあるんですか」


「川に(ひた)ってたら……」


「え?」


「川に(ひた)ってたら風邪ひいたの」


「すいませんちょっと何言ってるかわからないです……」


 よくわからないけど馬鹿なのはわかった。


「まぁいろいろあったんだよー」


「ここら辺に川なんでありましたっけ?」


「山の方の森入ってくと小さい川あるよ」



「へぇー。それでそこに(ひた)ってたと」


 だいたい(ひた)るってなんだろう。()かるじゃないの?


「そうそう。まさか風邪引くとは」


「先輩らしいですね」


「馬鹿にしてるでしょ。もうこの話終わり!」


「食べますか」


 ぬるくなっちゃう前に食べないと美味しくなくなる。


「今日はシュークリームなんだ」


「枇杷のシュークリームですよ」


「枇杷って黄色いやつ?」


「そーですよ。時期ですからね」


「これ美味しい!って後輩くんの作るやつは全部美味しいけどね」


「ありがとうございます」


 ピューレにして生クリームと混ぜて小さく切った果肉乗せただけなんだけどね。

普通にお店のやつ買って持ってきてもわからないんじゃないのかな?

今度やってみよう。


「あ、これ蘭ちゃんに持って帰ってあげてください」


 小分けにした小さな箱を渡す。


「わたしの分はー?」


「今食べてるじゃないですか」


 どんだけ食べる気なんだ……。


「えー。それは別じゃん」


「別じゃありませんよー。ちゃんと渡してくださいよ?確認しますからね」


「ちぇっ〜。わかったよ」


「破ったらもうケーキは食べれないと思ってくださいね」


「絶対に届けます!!」


「じゃあ食べたら帰りますよ」


「え?早くない?」


「先輩風邪ひいてるじゃないですか。早く帰って寝たほうがいいですよ」


「大丈夫だって」


「移されたくないから僕は帰りますよ」


「なら帰るかぁ……」


 そんな残念そうな顔しなくても。

風邪治さないとちゃんと練習できないでしょ?




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