21-クラシック。
久しぶりに先輩のところに行くなぁ。
ケーキを持って教室へ向かう。
あれ?珍しく音が聞こえる。
「演奏してるのかなー?」
邪魔しちゃ悪いかな?
顔だけ出してケーキ渡して帰ろうかな。
音が鳴らないようにドアを開けてこっそりと教室に入る。
椅子に腰掛け演奏を聴く。
綺麗な曲だなぁ……。眠くなるようなゆったりとしてる感じだ。
この曲結構好きかも。
クラシック?とか普段自分から聴かないけど案外いいかもしれない。
突然演奏が止まる。
「あー!難しいぃぃ!!なんなのこれー」
大きな声で不満を口にする。
どこか間違えたのかな?全然違和感なかったけど。
「だいたいなんでわたしの苦手な奴が詰まってるのさ。やってられな……」
目が合う。
「いつから居たの……?」
顔を真っ赤にして問いかけてくる。
「ちょっと前に」
「もう……声かけてよ!」
「聴き惚れてて」
「もう……。ドアにベルつけようかな」
そこまでしなくても。
「まぁまぁ、ケーキ持ってきたんで良かったら食べてください」
「物で釣られるほど安い女じゃないもん」
涎垂れれますよ?
「ま、まぁせっかく持ってきてくれたしたべようか!」
安い女だった。
「練習はもういいんですか?」
「今日はもういいや。うまく弾けないし」
いいんですかそんなんで。
「今日は後輩くんに見せたいものがあるんだ〜」
袋を取り出してガサガサと中を漁って机に並べる。
「ポットでしょー。ティーバッグに紙コップとお水」
本当に持ってきてるよ……。凄い行動力だ。
「どうしたんですかこれ」
「買ってきた!」
たまに食べるケーキの為にわざわざ……。
「先輩ってアホですよね。てか電気勝手に使っていいんですか?」
ダメ盗電。
「先生に許可貰ってるよー。何に使うかは言ってないけどね」
音楽関係で使うと思ってるよねそれ。
絶対紅茶飲むためとは思わないし。
「どうなってるんだこの学校……」
教室1つ使えたり電気使えたり自由すぎる気がする。
自分も調理室は使わせてもらったり冷蔵庫にも自由に入れてるし先輩寄りかもしれないけど。
「これで紅茶飲めるんだからいいでしょ」
ポットに水を入れてお湯を沸かし始める。
「ちなみにこんなのもあるよー」
袋から紙皿とプラスチックのフォークを大量に取り出す。
さっきの紙コップといいこれといいなんでこんなに多いの?
「多すぎませんか?」
「業務用で買ってきたからね」
「使いきれるんですかこれ」
「卒業までまだまだあるから大丈夫でしょ」
卒業までケーキ食べる気満々ですか。
「だいぶ先の長い話ですね」
「だからたくさん持ってきても大丈夫だよ」
「善処しますよ」
「よし!お湯沸いたからはやく食べよー」
先輩が紙コップにティーバッグをいれてお湯を注ぐ。
紅茶のいい匂いが教室に広がる。




