18-すれ違い。
「今日でこいつとも最後か……」
長かった。漸くこいつから解放される。
もう食べなくて済むぞ。
もう十分に作り慣れたそれをゆっくり丁寧に確かめるようにこなしていく。
生地を焼きムースを作り型でくり抜いて層にする。紅茶を入れ飾りを作り一息つく。
窓からは生ぬるい風と暖かな日が差し、この空間を包み込んでいる。
「落ち着くなぁ」
ここだけ時間がゆったり流れてるように感じる。
そんなわけ無いけどね。
そーいえば先輩最近絡んでないけど元気かな?レッスンとか忙しそうだったけど。
「でも料理の本買ってたな」
結構ちゃんとした本だったけど作れるのだろうか?
蘭ちゃんに教えて貰ってたりして。
そんな姿を想像して笑う。
「ありえそうだ」
作り終わったら帰りに覗いてみよう。ケーキの処理も兼ねて。
冷蔵庫から取り出して仕上げる。
紅茶でコーティングして飾りを乗せてもう一度冷蔵庫へ。
その間に片付けを済ませて帰る支度をする。
固まったら写真を撮り箱にしまっていつもの先輩の教室へ向かう。
「バイオリン聞こえないな」
近くに来ても音が聞こえない。今日はもう帰ったのかな?
教室を覗くのやはり誰も居なかった。
「本当に忙しいんだな。帰るか」
明日でひとまず終わるしまた来週来よう。
作ったケーキ消費することを考え重い足取りで家に戻った。




