2-夕暮れ。
「あ、えーと……あ、怪しいものじゃないです!」
先ほどの驚きで動揺していて咄嗟にそう口走ってしまった。
その発言が既に怪しいじゃないか。と内心後悔しつつ声の主を見上げる。
そこに居たのは夕焼けのオレンジに染まる少女だ。
少女の黒髪が窓から吹く風に揺れ、整った顔立ちに華奢な腕その手にはバイオリンが握られている。
その姿はとても幻想的でつい、見惚れてしまう。
「私の顔何かついてる?それより大丈夫?大きな音がしたけど……」
そう言って不思議そうに顔に手を当て確認する少女。
見惚れていたのがばれたのかと思い赤面してしまう。
「あ、いや……綺麗な音につられて覗いてみたら突然大きな音が聴こえてびっくりしちゃって……」
そう言って自分がまだ座り込んでることに気づき慌てて立ち上がる。
「すいません、邪魔するつもりじゃなかったんですけど……」
「大丈夫だよ、それよりごめんねその音だしたのわたしなの」
申し訳なさそうに俯く少女。
「覗いたのが悪いんです。気にしないでください」
「ありがとう。それ荷物落としちゃったみたいだけど大丈夫かな?」
バイオリンを置きこちらに歩いてくる。
「え?ああ、大丈夫ですよ。壊れ物じゃないんで」
言われて思い出し、足元に落ちている箱を拾う。
「よかったぁ。えーと、わたし2年の音羽です」
丁寧に目の前でぺこりと会釈をし微笑んでくる。
遠くで見た姿より目の前で微笑む少女はとても可愛く目を逸らす。
「1年の小鳥遊です」
「1年生かぁ、よろしくね後輩くん」
「は、はい。それじゃあ寄るところがあるのでこれで……邪魔してすいませんでした」
軽く会釈し早く教室を出ようと後ろを振り返り、ふと手元の箱に目が止まる。
落としちゃったけど邪魔したお詫びに。
そう考えてもう一度振り返る。
「これよかったらどうぞ」
そう言って先輩に箱を渡し、教室をでて玄関に走り、そのまま真っ直ぐに帰路についた。