16-チーズ。
「はぁ、しんどい……」
ここ1週間毎日同じ物を食べている。作っては食べ作っては食べ。
しかも毎回できるのが1個じゃないのも辛い。
同じ種類を食べ続けると飽きてしまう。
中谷に食わせたりクラスに持っていったり、蘭ちゃんにも届けたりしたけどそれでも毎日5.6個は食べた。
「虫歯になりそう」
あと胸焼けがひどい。
もう7月だし食べちゃわないと腐っちゃうしなぁ。
こんな生活してるってスイーツ好きの女子ってちょっと怖いな。
「先輩と蘭ちゃん恐るべし……」
今日はしょっぱい物を食べたい。ラーメンとか。
本屋にも行きたいし街に行こう。
デパ地下っていつ来ても混んでるよね。
惣菜コーナーとか主婦が戦争してるし。
それを横目に目的地に向かう。
チーズの専門店だ。
こういう所って子供が見てても相手にしてくれないのがちょっと面倒だけど。
「すいません。ブルーチーズありますか?」
「ブルーチーズですか?えーと、ここらへんがブルーチーズになりますね」
手を向けられた方には沢山の種類のブルーチーズがあった。
流石にわからないな……。
「おすすめってどれですか?」
「こちらになりますね」
めっちゃ青いんだけど……。
「試食なさいますか?」
「あ、お願いします」
これを食べるのか。人間って怖いもの知らずだね。最初に食べたやつ凄くない?だってこれカビじゃん……。
ここまでまみれてると流石に抵抗がある。
クラッカーに乗せられて差し出される。
「ちょっと癖が強いですけど赤ワインと一緒に食べられるとコクがでますよ」
未成年なんですけど。プレゼントだとでも思っているんだろうか。
思い切って口に運ぶ。口に入れた瞬間に独特の風味が口の中に広がる。
流石にキツすぎるなぁ……。
涙目になりながら食べていると。
「流石にきつかったですかね」
と笑いながらレーズンを一粒渡してくれる。
レーズンと一緒に食べると優しくなって食べやすい。けどもう絶対にこれは食べない。
大人になったら美味しく感じるんだろうか?
おすすめって言ってたし。
「結構癖が強いですね……。スティルトンってありますか?」
たしかイギリスのチーズだったはずだ。
「ありますよ。結構種類ありますけど」
「おすすめでおねがします」
「それだとこちらですね。さっきよりは断然食べやすいですよ」
今度はクラッカーではなく胡桃の上に乗せられていた。
どのチーズと何が合うのかちゃんとわかってるのか。すごいな。
今度は先ほどのようにきつい感じではなく少し甘めでねとっとした食感だ。
胡桃と食べるとすぐ食べやすい。
「これいいですね」
「ちなみに用途は?そのままお食べになるんですか?」
「いえ、お菓子にちょっと」
「なるほどお菓子でしたらホワイトスティルトンもございますが」
聞いたことない。青カビじゃない奴なのかな?
「どんなのなんですか?」
「青カビではなくて普通のチーズで中にフルーツが練り込まれてるタイプですね」
なるほど。お菓子にぴったりってわけだ。
でももう味見はしたくない。今食べてもわからなさそうだし。
結局2種類のチーズとレーズンを買った。
レーズン美味しかったんだもん。




