14-交換。
「おーい。起きろもうできるぞ」
中谷を叩き起こす。
「もう食べれねーよ……」
慈悲はない。
キッチンに戻り冷蔵庫から取り出し断面を見るためにカットして完成品と一緒に皿に並べて写真を撮る。
「うーん。なんかいまいちだなぁ……」
シャッターの音に釣られてみんながやってくる。
「美味そうだな。てかもうプロ並みじゃん……」
「美味しそう〜もう小鳥遊さんお店出したらどうですか?」
「後輩くん…これ食べてもいいよね?」
三者三様に言葉を口にする。
「ありがとう。でも美味しいかどうかわからないから」
先輩は何言ってるかわからないです。
「後輩くん〜無視しないで」
涙目になってる。けど反省してもらおう。
「見た目はいいんじゃないですか?飾り付けも立体感あるし色も綺麗ですし」
ちゃんと意見を言ってくれるのはありがたい。
「断面がちょっといまいちかなって……。見た目はなんとかなるから今回は味かな」
とりあえず食べみるか。
1人1つお皿に盛り付けて渡す。
袖を摘まれ後ろに引っ張られる。先輩が捨てられた子犬のような目で見つめてくる。
その仕草が可愛らしくて少しどきっとした。
それに気づかれまいと慌てて顔を逸らしてケーキを差し出す。
「仕方ないですね」
「ありがとぉ〜」
大喜びでケーキを受け取り口に運ぶ。
感想欲しいからちゃんとあげるんだけどね。
「甘酸っぱくて美味しいねこれ。紅茶?」
「周りの赤いのが紅茶ですよ」
「へぇー面白いねこれ。でも中がムースとスポンジでなんかいまいちパッとしない感じ……」
「そう?シンプルで美味しいと思うけど……。おねぇちゃんの好みじゃない?」
「うーん。なんか生クリームが欲しい」
あーでもないこーでもないと本人そっちのけで語り合ってる。
本当にお菓子が好きなんだなぁこの人達は。
「とりあえず食べれるだけでよかったですよ。後は色々調整してみますね。食べるの手伝ってもらってありがとうございました」
「こちらこそ呼んでもらってありがとうございました!お陰で美味しいケーキたくさん食べられました!」
深々とお辞儀をする蘭ちゃん。
「ありがとね。またやるときは遠慮なく呼んでね?」
そうは言っても先輩連絡先なんて知らないし。
「なら先輩連絡先教えてくださいよ」
「あれ?教えてなかったっけ?どーしようかな……嘘です。教えます」
下手なことを言って自らケーキを得られる機会を捨てずに済んだようだ。
「はいこれ!私の連絡先ね」
「ありがとうございます。後で登録しておきますね」
「絶対ね??それじゃあ今日はおいとましようかな」
「小鳥遊さん今日はありがとうございました!」
玄関で見送りして一息つく。
先輩可愛かったな……。
「それはそうとして片付けして改良点考えないと」
お菓子のこと考えてるときが一番楽しい。
「おーい中谷。お前はどうすんだー?」
食べ過ぎて死んでいる友達に声をかけながらリビングへ戻っていった。




