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131-確認。


「中谷このあと暇?」


 HRが終わって教室から出ようとしていた中谷を捕まえる。


「忙しい」


「何か予定あるの?」


「お家でゴロゴロする」


 中谷が暇なのはほぼ確定事項なので直前に声をかけました。なのでゴロゴロは不採用です。


「じゃこのまま付いてきて」


「おい! 人の話聞いてるのか!」


 なにやら後ろで抗議する声が聞こえるが無視して調理室へ移動する。


「それじゃちょっと待ってて」


「連れ出しといて置いてきぼりかよ」


「あーオーブンの予熱しといて」


 中谷に仕事を与えて早歩きで先輩の住処へと向かう。

 この道を通るたび先輩バイオリン弾いてないなぁと思う。完全に練習スペースじゃなくお茶会スペースに成り下がっている気がする……。剥奪されないのかな?


「先輩ー。どうせ暇してる先輩ー。あと練習しないで律さん達にボロ負ける予定の先輩〜」


「そんなに呼ばなくても聞こえてるよ! あと暇はしてるけど練習はしてるもん」


 椅子に座ってくつろいでいた先輩が立ち上がって抗議する。少なくとも学校での練習なんてほぼ聞かないんだけど……。


「ここではしてないじゃないですか」


「別にここだけが練習する場所じゃないし」


「それもそうですね。そういうことにしておきます。それより行きますよ」


 本当にしてるかどうかなんて正直興味ないです。だって素人からしたらもう同じなんで……。サボって困るのは先輩だもんね。

 文化祭の時、屋上で頑張るって言ってた気がするからちゃんとしてるんだろうけど……。


「え? どこ行くの? 今日のケーキは⁉︎」


「調理室行きますよ〜。ちゃんときてくださいね」


「今日は作るところから? 紅茶淹れたら行くから先に戻ってて〜」


 別に紅茶なんて今淹れなくてもいいんじゃないか。まぁ先輩に何言っても無駄だからいいや。


 紅茶を淹れ始めた先輩を置いて中谷の元へと帰る。ちゃんと予熱入れてくれたかなぁ。


「ただいま」


「早かったな」


「ちゃんと仕事した?」


「予熱なら入れといたぞ。人使いが荒い奴だな」


 きちんとオーブンがついてるのを確認して冷蔵庫から材料を取り出す。


「それで? なんで呼ばれたんだ」


「まぁまぁこれから作るなら大人しく踊っててよ」


「大人しく踊る方法を教えてくれ」


 そんなの自分で考えてくれ。携帯で調べればいいんじゃない?

 中谷とくだらない会話を続けながら準備を進める。


「本当は出来てからでもいいんだけど、中谷帰るでしょ。だから諦めて」


「と言っても本当に何してればいいんだよ……。手伝うわけでもないんだし1人で暇だぞ?」


「あぁ、安心して1人じゃないから」


 紅茶を携えたポンコツ先輩がお供につきますよ、っと。

 そんなことを言ってたら扉が開いて先輩が顔を覗かせる。


「後輩くん〜。ちゃんときたよー」


「子供じゃないんだから辿り着くかどうかのレベルで報告しないでくださいよ」


「あー! もう酷いなぁ。せっかく呼ばれたから来てあげたのに……」


「別に食べなくていいなら帰っても構いませんよ?」


「え、まじ?」


 横から嬉しそうに口を挟む中谷。お前はダメだよ。1人はなんかあれじゃん。


「って事で中谷は先輩の相手でもしてて」


 準備ができたので生地作りに取り掛かる。バナナをペーストにして生地に混ぜて……休ませてる間に中のムースを作って。


 隣を見ると先輩から紅茶を貰って気まずそうに啜る中谷の姿があった。先輩と付き合いたいとか言ってなかったっけ? 今が距離を詰める大チャンスだと思うけど……。

 先輩は先輩で縁側でお茶を飲むおばあちゃんみたいにほっこりしながらこちらの作業を見ている。作業というか果物を。


「先輩はもう修学旅行近いですけど準備とかしました?」


 生地を焼く間に話しかける。3人も居るのにずっと無言は気まずいし。


「修学旅行って言ったって着替えぐらいじゃん? まだなんもしてないよ」


「そんな事ないんじゃないですか? 他にも例えば……」


 例えば……。例えば……?


「お菓子とか?」


 そうお菓子とか。中谷が代わりに言ってくれた。流石修学旅行をループしたい男は違うね。


「お菓子かぁ〜行く日の朝にコンビニで買えば済んじゃわない?」


「先輩がそれで足りると……?」


「後輩くんは私をなんだと……あくまでも私が好きなのはケーキとかであってお菓子はそんなに食べないよ?」


 たしかにそう言われると先輩がお菓子食べてるところなんて見てないかもしれない。


「それにお菓子ぐらい無くなったら現地で買えばいいし」


「でも友達に分けたりなんだりするから必要じゃないですか?」


「……そんな仲良い友達居ないけどね」


 あーそうでした。そうでしたけど修学旅行ってそんなの気にしないでバスで近くなった人同士で交換とかするもんじゃない?」


「中谷これがスクールカーストトップの現実だよ」


「どう反応すればいいか分からない話題を投げかけないでくれ」


 中谷は別に前々から先輩の本体を垣間見てるはずだけど……。


「バイオリン持ってけないんですから修学旅行でクラスメイトと仲良くしてくださいよ」


 焼きあがった生地を冷ましながら先輩に向けてアドバイス? する。

 先輩が友達をちゃんと作れれば文化祭であんなに連れ回されることもなかったんだし。あれはあれで今となっては楽しかった思い出だけどもう二度とやりたくない。

 なので来年は是非先輩が変なことを言いださないように是非友達作りに励んでほしいものだ。


「あ、それってもしかして俺らがやる作業のやつ?」


 チョコレートの準備をしていると中谷がこちらに寄ってきて聞いてくる。


「そうそう。簡単だから見といて」


 テンパリングしたチョコに三角のセルクルをつけて、余計なチョコを落としたら模様をつけるシートを全面に綺麗に貼り付けて冷蔵庫で冷やすだけ。


「本当につけて貼るだけだな。これなら終わりそうだな」


「量が量だけどね」


 チョコレートが冷えたらムースを詰めて、その中にフィンガーライムを入れたらバナナの生地で閉じたら完成。



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