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126-ホットケーキ。


「言われた通りに全部持って来ましたけど」


「あ、後輩君おはよ! ちょっとまってねー」


 なにやら鞄の中をガサガサと漁って何かを探してるようだ。


「お待たせ」


「それでどうするんです? これ。ただ食べたかったんですかね」


 コンポートの瓶の入った紙袋を机の上に乗せてポットの電源を入れる。

 そろそろ時期的には冷たい玄米茶とか麦茶が欲しいなぁ。まぁ冷蔵庫がないとこの時期に冷えたお茶なんて飲めないし我慢するしかない。


「確かに食べたいけど今日は違うよ! こんな物を用意してみました」


 鞄の中から黒いコードと黒いプレートを取り出して机に乗れられる。もしかしなくてもホットプレート?


「わざわざ持って来たんですか?」


「そー! 中古屋さんでついでに買って来たの」


 なぜか得意げな顔を向けてくる先輩に溜息をつく。こんなの学校で何に使うんだろうか。お好み焼きでも作るのかな?


「こんなの何に使うんですか。学校に私物増やしたらそろそろ本当に怒られますよ?」


「バレなきゃいいのよ! ま、座って座って。さっさと始めちゃおっか」


 だから何をするんだろう。とりあえず言われた通りに椅子に座って先輩を待つ。

 ホットプレートを繋いで温めて、そのまま物の影になっているところへ向かって何やらしている。

 何かあるのかな? ちょうど良い感じに隠れていてよく見えない。今まであそこに何かあったっけ……?

 バンッ。と音とともに先輩がこちらへ戻ってくる。手には何やらピッチャーの様なものとホイップクリームの絞り袋が握られている。


「え……?」


 何でホイップクリーム? どこらか取り出したんだろか。というかバンッって……。何か閉めた音だよね?

 まさかクーラーボックスでも持って来たのかな?


「どしたの後輩くん?」


「いやどういう流れで先輩の手にそれがあるのかと思いまして……」


「ん? あぁ、これね。そこに仕舞ってたんだよ」


 当然といった感じで軽く指を差す。やっぱりクーラーボックス持って来てたぽい。

 どこまで自由なんだ。


「まぁ、先輩ですもんね」


「なんの話……? ま、とりあえず早く食べたいから焼いちゃうよ」


 ピッチャーを思いっきり振って中身を混ぜる。見てると結構シュールです。

 満足したのか蓋を開けて、温まったホットプレートに垂らしていく。

 どろっとした生地が美味しそうな音を立てて広がって、甘い良い香りが鼻をくすぐる。


「ホットケーキですか?」


「そ! 正解ー! よくわかったねー」


「ここまで来たらお好み焼きかホットケーキしかないでしょうに……」


「さすがー! 今日はホットケーキパーティーなのです。私ホットケーキ焼くのは上手いからね」


 ホットケーキは料理に入らない可能性が出てきた。先輩が出来るというあたりに。


「先輩がなんか作るの初めてですね。焼くだけですけど」


「まぁまだ料理練習中だからね! そんなに早くお弁当欲しいならもう作ってあげよっか?」


「遠慮します」


 即答で拒否に決まってる。蘭ちゃんから良い報告が来ないってことはまだまだ悲惨なできってことになるし……。


「じゃあ、卒業まで気長に待ってよ」


 持ってくるのは確定みたい。先輩のお母さん料理上手なんだから何とかしてくれないものか。

 先輩はホットケーキをひっくり返しながら、紅茶を入れてティータイムの準備を進める。


「あ、そうそう! こんなのも持ってきたよ」


 鞄から白い粉の入った袋を取り出して机に乗せる。小麦粉?


「なんですか? これ」


「粉糖! ホットケーキといったらこれでしょ!」


「ハチミツとかバターとかもっと色々あるのでは?」


「あ」


「どうしました?」


「忘れた……」


「なら何持ってきたんですか。チョコソースとかですか」


 先輩は絶望した顔を焼き上がりそうなホットケーキに向ける。そんなに見つめたってホットケーキは悪くないですよ。


「バナナも忘れた。もうだめだ。お開きしよう」


「ここまでやっといてですか?」


「だって粉糖とホイップクリームと後輩くんのコンポートしかないよ! ?」


 結構十分だと思う。お店で写真撮りたくなる様な豪華なものにはならないけど美味しくは食べられるんじゃないのかな?


「先輩ドジっ子ですからね。そういう可愛いところいいと思いますよ」


「かわ……!?」


 何故が赤面している先輩からヘラを奪い取ってホットケーキをひっくり返す。焦げちゃうところだった。本当に上手に焼けるのかな。

 可愛いって言われたくらいで今更なんで赤くなってるんだろう? 前までは肯定して返してきてたくせに、ついに羞恥心とか芽生えてきた……とか?


「ほら、焼けましたよ?」


「え、あうん。食べよっか」


 そう言ってホイップクリームと粉糖をこちらに寄せてくる。自分でやる気はないぽい。まぁいいんだけどさ、絞って載せてふるうだけだし。


「先輩」


「はいはいなんでしょう」


「ふるいあります?」


「ふるい……?」


「えーと、粉糖をパラパラってやるやつですね」


「ないよ」


「え?」


「ない。必要なの?」


 本当に作ったことあるのかな? 疑いの方が強くなってきた。

 あとで蘭ちゃんにメール入れておこう。


「じゃあどうやってかけるんですかこれ」


「上に振りまいてホットケーキを下からスって当てればいい感じにかかるでしょ」


「先輩ってやっぱり料理ダメダメですね」


「え!? なんでいきなりディスられてるの」


「だいたいそんなことしたら床大変でしょう」


「窓の外でやればいいんだよ。それくらい考えてよねー」


 その前にふるいの存在を考えて欲しかった……。


「そんなことしたら蟻とかたくさん湧きますよ?」


「それは私の責任じゃないもん。やった人のせい」


「最低ですね!」


 人にやらせといてそれは酷い。もしここに蟻が大量に入ってきたら、また何とかしてーっていうんだろう。


「ほんとめんどくさい人です」


「褒めても何も出ないよ。早くー! 食べたいんだから、冷めちゃうよ」


 御構い無しに次のホットケーキを焼き始める先輩。

 しょうがない。調理室から拝借してこよう。


「それじゃちょっと持ってくるんで大人しく焼いててください」


「え? どこ行くの後輩くんー」


 問いかける先輩を放っておいて気怠そうにふるいを取りに向かった。



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