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123-不満。


「あー。未だに納得できないよー」


 文化祭明けの火曜日。振替休日を終え皆が片付けに追われる中、いつもの教室でぐったりと机に突っ伏して文句を言う先輩。


「そんなことよりクラスの片付け行かなくていいんですか?」


「それどころじゃないー。それに後輩くんだってここにいるじゃん」


「それはそれですよ。だって準備も当日もしてませんし? 片付けしなくても許されるかなって」


 全然そんなことはないんだけど。タイムリミットの迫ってきた大会のレシピでも詰めようかなって思ってここにきてみたら、案の定先輩がいたのだ。

 図書館とかじゃなくて真っ先にここにきてしまうのは完全に先輩に毒されてしまっている……。


「ならわたしもいいや〜」


「よくはないと思いますけどね?」


「いいったらいいの! 後輩くんは細かいんだから。そんなことより文化祭の結果だよ!」


 机を叩きつけて、体を起こして叫び出す。相変わらず元気だなぁ。


「何が不満なんですか? すごい満足そうだったじゃないですか」


 望みのケーキを売り、旋律コンビとステージに立ち、満身創痍の後輩を夜まで連れ回しクラスの出し物まで参加して。

 去年とは違う、望んだ通りの充実した文化祭だったんじゃないのでは……。


「最後まではね! それ以外は充実した文化祭だよ。文句のつけようがない……。わたしも成長したよ」


「なんのかはさておき、成長したならいいじゃないですか」


「なに綺麗にまとめようとしてるのさ! よくないでしょ、せっかく一位取ったのに……」


 まぁ、あんだけ売り捌けば一位を取れてもおかしくはないとは思うけど。単純計算で売り上げ109万くらいになったんじゃないのかな。

 原価とか引いたらもう少し純利益低くなると思うけどそれでも半分くらいは儲けてるはず……。


「大金が手に入って良かったですね?」


「別にお金が欲しくて参加したわけじゃないもん……」


「思い出作れたなら問題ないのでは」


「そういう問題じゃない! わたしは一位を取ったのに景品が無いのが不満なのでございまするよお兄さん!」


 誰がお兄さんだ。こっちのが年下。

 いやそれで弟って言われても困るけどね。


「なんですかその変な喋り方。結局、景品目当てだったんじゃ無いですか」


「違う〜。違わないけど違うのー。取ったのにもらえないことが納得いかないだけ! 正当な権利の主張だよ!」


「つまるところケーキが手に入らなくて怒っていると」


「……。もうそれでいいよ」


 それでいいよもなにも、図星でしょうに……。

 そもそもそっちは選ばないって決め事は破る気満々だったみたいだ。


 因みに貰えなかった理由はお前ら異常すぎて来年以降誰かが真似したら困るから無し。らしいです。

 大人の事情があるんだろうけどおおまかにそんな感じで。頑張りすぎた結果これとは先輩も可哀想に。


「まぁ、どんまいですね」


「……めた」


「え?」


「わたし決めた! 後輩くんの絶対優勝するからね!」


 ケーキが手に入らなかった恨みが違うベクトルに向いてしまったみたいだ。やる気になるのはありがたいけど、なんか嫌な予感がするなぁ。


「といっても先輩が頑張ることないんですけどね」


「これは後輩くんにがんばってもらうしかない。わたしは当日、あの手この手で買収して……」


 ケーキに取り憑かれた悪霊が生み出されてしまった。


「やめてくださいよ。変なことしたら失格ですよ?」


「それは困る。レシピはもう完璧なの? 前に食べたやつが完成?」


「構造は決定ですよ。あとは中身を考え中です」


 味もそうだし、中の金柑の問題もある。やっぱりジャムとかにした方がいいんだろうか……。

 せっかく見た目は先輩のおかげですごい綺麗になるんだからなんとかしないと。


「ま、わたしは当分暇だからね! いつでも試食するから後輩くんがんばっ」


 ただ食べたいだけじゃん……。先輩のやることなんて特に無いけどさ。黙る練習とかくらい?



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