120-数独。
「どうしましょうか?」
「てきとうに回りたいところだけ入っていけばいいんじゃないかな」
「そうしましょうか。おねぇちゃんは捕まっちゃいましたし」
「自分のクラスだけはやめておこう。先輩と二の舞なりたくない」
「それも面白そうですけどね。ひとりぼっちは流石に寂しいのでやめときますが」
もしかしたら他に誰かいたらやられていたのかもしれない。
蘭ちゃんは自分が面白ければなんでもいいのだ。別に先輩だけじゃないのは気をつけないと。
「それじゃ歩いて良さそうなところ探そうか」
「ですねっ! 行きましょうか」
射的屋さんに数独、迷路と色んなものを回って楽しんだ。
数独なんて提案した奴はわりと馬鹿だと思ってたけど、案外ハマった。それでも知能指数が求められるものはどうなのかと思ったけどね。
解けた時間によって報酬をプレゼント。子供に簡単な真ん中以外が埋まっている奴。
在校生には学年に応じた難易度で、解けたら1番難しいのに挑戦できた。
「案外簡単だったな」
報酬のヌイグルミを抱えて蘭ちゃんへ話しかける。
「小鳥遊さんって頭良かったんですね……」
蘭ちゃんは5分で解けるような、数独の本を買ったら1ページ目に乗っている問題に悪戦苦闘を強いられていた。
凄い簡単な問題だったのに。蘭ちゃんもしかして受験怪しいんじゃないだろうか?
「数独なんて特定の数字の配置される可能性のあるところを2つ3つと出して、それの正解な通りを見つけるだけでしょ」
「何を言ってるのかすらさっぱりわかりません……」
「蘭ちゃんのは縦と横の数字を目で追えば確定で1マスに辿り着く問題だったんだけどね……」
「私、数学向いてないのかも……」
数独は数学の学力はあんまり関係ないとは思うけど。あれってなんの力が求められているんだろうか。
逆に射的は秀逸で、軌道が不安定なゴム鉄砲を的に目掛けてバンバン、バンバンと当てていた。
だけど残念ながら特別、報酬は無いようでやっすい棒のお菓子を大量に手に入れていた。
「アウトドア派だね完全に」
「こんなお菓子じゃなくて小鳥遊さんみたいなヌイグルミが良かったです」
蘭ちゃんは拗ねたように頰を膨らませて、お菓子を頬張りながら前を歩く。
「欲しいならあげるよ。男の子が持つようなものじゃないしね」
前を歩く蘭ちゃんへヌイグルミを差し出す。
持って帰ったところで家の隅にひとりぼっちになるだけ。それなら可愛がってくれる人に手渡す方がいい。
「私じゃなくておねぇちゃんにあげた方がいいんじゃないですかね?」
「どっちでも同じでしょ。どうせ同じ家に辿り着くんだし」
「焦点そこですか⁉︎ 誰の物になるかが大事なところだと思うのですけど」
先輩でも蘭ちゃんでも欲しい方が貰えばいいと思うけど……。
蘭ちゃんは絶対におねぇちゃんを折り合いに出さないと気が済まないのだろうか。
「なら先輩には別な何かを渡すから大丈夫だよ」
「それなら喜んでもらいますねっ! ありがとうございます」
ヌイグルミ1つでそんなに喜ばれるとは思わなかった。
蘭ちゃんもヌイグルミ好きなのかな?
先輩はヌイグルミに囲まれて寝てたけど……。
「それじゃ次はあれ行きましょーか!」
無邪気な笑顔で、前に見える列を指差して駆け出す。
離れないようにその後を追いかけながら。
「これってあんまり先輩と変わらないな」
そう1人呟いた。




