114-文化祭2日目3。
「一列に並んでくださいー!」
蘭ちゃんが必死に声を上げて列を正している。
昨日より明らかに多い気がするけど……。どう考えても昨日の方が当たりなのに。
「今日は凄いねー! たくさん売れるよ?」
「わかりましたからそのドヤ顔をやめてとっとと詰めてくれませんかね。溜まってますよ?」
「わたしの手は2つしかないんだもん。限界がある」
「手ぐらい生やしてくださいよ」
すぐに売れていくから正直後のことを考えるて凄い嬉しいんだけど、これは明らかに多い……。隣とか全然お客さんがいないし……って隣の店員まで並んでるじゃん。なんでもありだなぁ……。
「昨日もこんな忙しかったんですか? あ、4つですね?2千円になります」
注文を取りながら質問をしてくる蘭ちゃん。そんな余裕まであるのか。仕事ができる女の子っていいよね誰かさんと違って。
「いや確かに列はできてたけど、こんなに酷くはなかったような?」
「きっと昨日のが噂で広まったんだねー。良かったじゃん後輩くん大人気」
「別に嬉しくは……」
ないわけじゃないがこのハードっぷりを考えるとマイナスな気がする。
なんで今日はこんなに酷いんだろう……?
「お……う、小鳥遊。大人気だな」
欠伸をしながら悠々と横から話しかけてくる。
横を見なくてもわかる。
「手伝いに来てくれたの?中谷」
「そんなわけないだろ? ちょっと面白いものを見つけたからさ、見せにきた」
見せたいもの? そんなくだらないことのためにわざわざ来たのか……。
もっと文化祭楽しめばいいのに。人のことを言える義理はないが。
「面白くなかったら覚えてろよ?」
「安心しろ。お前に関係あることだから」
そう言ってスマホの画面をこちらに向けてくる。
画像かなにかかな? 先輩の盗撮写真でもない限り驚かないよ?
「ちょっと待ってキリのいいところで……。って口で説明できない?」
見せたいものがあるって言ってるのに口で済むわけないか。
「簡単に言うとだな。お前らのケーキ? というか出店がツヌッターで凄く話題になってる」
「何を馬鹿な……」
突き出されたままのスマホを覗いてみると、そこにはケーキの写真と文化祭の時間と学校名が書かれていて、それが凄い反応があってお気に入りとかが数万になっていた。
「コラ画像?」
「なんでわざわざこんな無意味なコラ画像を作るんだよ」
スマホを引っ込めて何かを操作してもう1度こちらに戻す。
「リプライにもケーキがたくさん」
見ると、『わたしも食べました!』だとか『文化祭でこんなケーキを食べられるとは思ってませんでした』など凄い。
「頭痛くなってきた……」
「人気者は辛いな」
「それ先輩には見せないでね。めんどくさいから」
「なんでだよ喜ぶだろ?」
「そのハイテンションの先輩のお守りは誰がやると思ってんの」
「あ、そっか。まぁ俺じゃないからいいんだけど」
「そんなことしたらお前の次に食べるケーキは塩と砂糖がうっかり間違ってるけど、仕方ないよね。うん」
そのお菓子を作る余裕も無さうだけどね……。疲労と睡眠不足で。
「やめとくわ……。まぁだからこんなに凄いことになってるだな」
「載せたやつの事を絶対に許さない」
「いいじゃん。儲かるしすぐ終わりそうだし。数少なかったんじゃないのか? 倍くらい……」
何を言っているんだ? そんなことしたら朝早いどころか2人で徹夜コースだよ。
「そんなに朝早く来たかったんだな。ならその元気を使ってここ手伝って言ってよ」
「悪いね。この後女の子と一緒に回る予定なんだよねー。じゃ、そゆことで!」
女の子となんて分かりやすい嘘なんてついて、ばればれだろ。彼女いないんだから。
それともナンパ成功したのかな?
「ちょっと後輩くん! いつまでサボってるのー。もう限界だよ」
「限界超えたら教えてください」
「そーいうのは後でいいから早く詰めて〜! 凄い溜まってるから」
しょうがない。お客さんに申し訳ないし早く持ち場に戻ろう。蘭ちゃんにも悪いし。




