表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/143

112-文化祭2日目。


 今日も朝から出店のアップルパイをせっせと作り続ける。

 昨日よりは格段に楽で、焼いてある生地に作ってある中身のりんごを乗せてパイを網状に組んで被せ、ひたすらオーブンに突っ込むだけ。


「これなら1人でも良かったかも」


「連日、人のこと朝っぱらから呼んでおきながらそれを言うか」


 隣で永遠と生地にリンゴを詰める中谷が文句を言いだす。


「いやいや、中谷が居てこそだだからね」


 お世辞やご機嫌とりじゃく、本当にいるだけで仕事が半減するから楽できます。ありがとう。


「結局昨日は1人で仕事させられるわ。奢ってもらうのも忘れるわで踏んだり蹴ったりだ」


「今日はちゃんと奢るよ。時間があれば……」


「時間空くのかよ」


「先輩次第かな……」


 昨日も結局先輩にラストまで振り回されたしね。

 あの元気は一体どこから湧いているんだか……。甘いもの食べ続けてるとエネルギーを余らせてああなってしまうのかな?


「昨日も終わった後は先輩とデートか?」


「デートではないけどそうだよ。連れまわされた」


「展示でも回ったのか」


「いいや、屋上」


 先輩がそんな甘いわけないじゃないか。やることは斜め上なんだ。


「……は? 屋上? あそこって入れたのか」


「いや鍵かかってたよ」


「ならなんで入れてんの? 外壁よじ登ったのか」


「なわけないでしょ。普通に先輩が合鍵を持っててね」


「いやいやいや、どこが普通なんだ」


 先輩にかかれば合鍵の1つや2つ朝飯前なんですよ。そういうことにした。考えてはいけない。


「さぁ? 昔、手に入れたらしいよ」


「何者だよ本当……。それで? その先輩は?」


 ただの天才バイオリニストの美少女引くことの料理。な人です。


「今頃家でご飯でも食べてるじゃないの?」


「重役出勤かよ。流石、先輩だな」


 店もそのままだし先輩のやることなんてないだろうからね。手伝いに来るとも思えないし。

 こっちはこんなに眠いというのに。結局全然寝れてないし……。

 空き教室で少し寝たけどね。先輩の演奏を聴きながら、疲れは取れなかったけど先輩が眠くなる曲にするのが悪い。


「いても出来ることないしね」


「この詰める作業を是非変わって欲しいんだが?」


「先輩には無理」


「他の所はあんなに人いるのに俺らのところだけ2人だぞ。ブラック企業だな」


「今のうちに社会の勉強しとけ」


「ブラック企業に就く前提かよ……」


 世の中どこもブラックだろうに。一握りのホワイトなんてなかなか引けないよ。


「わたしの悪口で盛り上がってるところ悪いんだけどさ〜。間に合いそう?」


 後ろの窓から顔を出して不満そうに頰を膨らませる先輩。


「来てたんですか。別に悪口じゃないですよ?」


「くるよそりゃ! わたしの出店計画だよ?」


 その割には結構時間経ってますけどね。


「なら先輩が売り物作るべきだと思いますけどね?」


「わ、わたしそろそろ行かなくちゃ! 予定が……。なので頑張ってください! さようなら〜」


 颯爽と踵を返し、立ち去って行ってしまった。


「逃げた」


「逃げたな」


「どうせやることなんて無いくせに」


 いつもの場所でなんかしてるんだろう。

 先輩のことなんかよりもアップルパイの方が大事だ。


「中谷そっちは後どんぐらい?」


「後、5個くらい」


「もう終わりそうだね。全部オーブンに突っ込んだら今度は切ってかないと……」


「今日は飾りはないのか。昨日みたいな地獄の」


 そのまま出すつもりだったけどなにか飾りをつけたほうがいいのかな。アップルパイってそんなものでしょ。


「アップルパイだから要らないと思うけどね」


「寂しそうだな。昨日と比べると」


 比べるのが悪い。昨日は昨日、今日は今日なんです。


「そんなに仕事したいの? 働きたがり」


「違うわ! 人がせっかく意見出してやってんのに」


「なら逆になに乗せる?」


「……」


「ないんかい」


 言うだけ言っといて特に浮かんでないみたいだ。他人任せな。


「なに乗せたらいいのかさっぱり浮かばん」


「基本はバニラアイスだけど無理だし無しでいいよ。お金かかるし」


「儲かってんだろ」


「全部先輩のだよ」


「金まであげてんのか……」


「そもそも初期資産とか全て先輩のポケットマネーだからね」


 払えない額じゃないが割と大金をポンと出せるのは凄い。しかもそれで他人任せね。

 信頼されてるって言えば聞こえはいいが、多分なにも考えてないだろう。


「お嬢様なの?」


「いや普通の一般家庭」


 最後のアップルパイをオーブンに入れて一息つく。あとは切るだけだ。ホームルームまでには間に合いそうだね。

 冷ます時間があるから結局いなきゃいけないんだけど……。


「逆玉じゃないのか」


「お金は持ってるみたいだけどね」


「いいなぁー。勝ち組じゃんか。可愛くて天才でお金も持ってるのがお嫁さんか」


「勝手に結婚させんな」


「しないの?」


「なんですると思ってんの……?」


「お似合いだし、そもそも常に一緒にいるじゃん。むしろ付き合ってない方が信じられんがな」


「先輩好きな人いるらしいよ」


「誰?」


「興味ないから聞いてないけど……」


 先輩の好きな人知ってもどうしようもないからね。知ってる人ならまだしも分からなかったら誰ってなるし。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ