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10-無邪気。


「今日はすぐに終わっちゃうな」


 今回作るのは明日の試作で使う飾り付けのガトーショコラ。

普通にガトーショコラを焼いて飾り付け用にカットするだけで終わりなんだけど。


 オーブンを予熱しておいてっと。ボールにバターを溶かしてチョコを入れて溶かす。

卵黄を加えてよく混ぜて薄力粉にココアパウダーをふるいながら混ぜ合わせる。


 別のボールに卵白を砂糖と一緒に泡立ててメレンゲにする。

それを先ほど作った生地に分けていれてさくさくと混ぜていく。最後にウィスキーを数滴垂らして馴染ませて型に入れてオーブンに突っ込むだけでお終い。

お手軽チョコケーキだ。バレンタインの定番になっちゃうくらいには誰にでもすぐに簡単に美味しく作れちゃう。


 お菓子作り始めた時は何回も失敗したけどね……。

メレンゲ潰しちゃったり、オーブン予熱忘れてたりね。あるあるだ。


 焼きあがったガトーショコラを切り分けて余った部分を箱に詰め、片付けをして教室へ向かう。

グラウンドでは部活動の生徒が元気に駆けまわっている。

教室に近づくにつれてバイオリンの音がきこえてくる。


「グラウンドにいる生徒達はこれを聴きながら部活してるのかな」


 前に来た時に窓が開いていたから多分外まで届くはずだ。

なんだか教室から聞こえるバイオリンを聴きながらグラウンドで部活するって漫画やアニメとかでありそうな青春って感じじゃない?


 なんて考えてるうちにドアの前に着いた。

邪魔しちゃ悪いし曲が終わるまでここで聴いていよう。


 前に聞いた時より綺麗に聞こえるような、そんな感じがする。素人だから気分の問題だろうけど……。

眠くなるような静かでゆったりとした大自然をイメージするそんな曲。かと思ったら突然その大自然を翔ける馬のような激しい曲に変わる。


「これってもしかして途切れないんじゃ……?」


 小声で呟く。

繋げて弾いたりするものなのかな?

ドアの窓から教室を覗き見る。


 目を閉じて体を揺らしながら演奏する先輩の姿。

演奏してる時の先輩は普段の先輩からは想像できない程綺麗で美しい。

たまに口元を綻ばせる時なんかはつい見惚れてしまう。


 その空間だけは切り取られた絵の様に。


 住む世界が違う。凡人の自分が絡んでいいのだろうか?

ふとそんなことが頭に浮かんだ。


 すると曲が途中で止まり、先輩がこちらに駆け寄ってくる。


「今日はなんのお菓子?」


 そう無邪気な笑顔でそう聞いてくる少女。


「今日はガトーショコラですよ」


それを聞いて嬉しそうに僕の手を引いて教室に入っていく少女を見ると、そんな疑問はもう無くなっていた。




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