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108-てんさい。


 壁にもたれかかりながら先輩が紅茶を淹れるのを眺める。

 鼻歌を歌い楽しそうに淹れたての紅茶を水筒に移す。

 なんで水筒を持ってきてるんだろう。計画的だな。まさか今日のスケジュールをきっかり決めてきたの?


「水筒なんて用意したんですか?」


「んー? そりゃせっかくの紅茶が冷めちゃうからね。というよりは無いと持ち運べないし」


「持ち歩く前提ですか」


「ちょっと外出て、喉乾いたな。ってなった時に紅茶出てきたら女子力高くない?」


「そうですか?」


「惚れちゃうだろー」


「全然。それを言う辺りあざといです」


「聞いてきたの後輩くんじゃん!」


「たとえ聞かなくてもその思慮がある時点でダメだと思いますよ」


「女子とはそう言うものだよ後輩くん。後輩くんの好きなあの子やこの子も同じだよ!」


「そーみたいですねー」


「うん。聞き流してるでしょ」


「よくわかりましたね」


 今日は冴えてるんじゃないですか。こっちは眠くててきとうですけど……。


「ちゃんと会話してよねー。大事なところなのに……」


「え? なんです? もっと大きな声で……」


 後半がごにょごにょしてて聞き取れなかった。なんて言ったんだろうか。


「もうなんでもない! 後輩くんのばかー」


「眠いのが悪いんです……」


「ちゃんと寝ないからでしょ?」


 誰のせいですか。


「すいません」


「今日はゆっくり寝なよ?」


 アップルパイ作らなくていいならゆっくり遅刻ギリギリまで寝ます。

 作らないといけないからそんなこと不可能なのにね。明日は先輩付き合ってくれるのかな? 設営もないだろうし。後で聞いてみよう。


「さて、行きますか〜」


「どこに」


「それを決めるのは後輩くんだよ?」


「え?」


「決めたー?」


「何がですか」


「もー。さっき言ったじゃん寝ぼけてるの?」


 なんか言われたっけ? 記憶を辿ってみてもそれっぽいのが思い浮かばない。


「言ったじゃん! 高いか暗いか!」


 あー。確かに言われてたけど……。


「意味がわからなさすぎて忘れてました」


「もうわたしがてきとうに決めるからね」


 結局先輩が決めるのね。今日は先輩の日だからいいけどさ。


「付いて行くんでパパッといっちゃいましょ」


「もっとこの時間を大切にしてよー。思い出作りなんだからさ」


「もったいぶる方が悪いんですよ」


「どこに連れていかれるんだろうなー。みたいなのないの?」


「不安感の方であります」


「別にとって食ったりしないから……」


「先輩にそんな能がないのは知ってますからそこは大丈夫です」


「わたしだってやるときはやるよ? 天才だもの」


「天災ですもんね」


「ついに後輩くんが認めた」


「そーですねー。先輩は凄いですからね」


 先輩のてんさいは天才なんだろうけどこっちは災いの方だから、多分噛み合ってないよね。


「褒めてもなんもないけどねー」


 水筒を入れた手提げ鞄を持ちながら手を広げてくるくると回り廊下の方へ向かっていく。


「なんですかそれ」


「なにがー?」


「……。なんでもないです。早く行きましょ」


「そーだね、いこっか。あんまり時間なさそうだし」


 なぜか陽気に足を弾ませながら歩く先輩の後を追って横に並ぶ。

 今日はなんか凄いご機嫌だ。明日もこんな調子だったら疲れそうだなぁ。

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