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99-文化祭初日2。


「後輩くんーおはよ!」

「おはよーございます。どうしたんですか?手伝いに来てくれたんですか」

「なわけないでしょ?こっちだって終わらなのに!」

「なら何しに?」

「後輩くんの顔を見に……?」

「じゃさよなら。忙しいんで」

「ちょ待ち!」

「なんですか?もう顔は見たじゃないですか」

「後輩くんには無駄だった……。はいこれ差し入れ」

「またおにぎりですか?」

「今回はサンドウィッチ!!とお茶。私とお揃いだよ?」


 そう言って手に持つお茶を見せびらかしてくる。

お揃いって言うのかこういうのは。


「ありがとうございます」

「あれ?あの子後輩くんの友達だ」

「手伝って貰ってるんですよ」

「お礼言わないと」


 中谷の方に走って挨拶にいってしまった。


「後輩くんのお友達くんこんにちわ!手伝ってもらってありがとうございます!助かりますっ」


 先輩が猫を被って中谷にお礼をする。

別に猫を被ってるわけじゃないのかな?これが外の顔なのか……?

自然と出てるなら恐ろしい。


「だ、大丈夫ですよ。あいつに後で奢ってもらうので」


 先輩相手に緊張してるのか。いつもは話題に出すくせに。


「そうですか?高いやつたくさん買ってもらってくださいね!あ、これよかったらどうぞ」


 手に持っていたお茶を中谷に手渡す。

てゆうか高いものを買わせようとするんじゃないよ。


「ありがとうございます。ありがたくいただきます」

「それじゃ頑張ってください」


 こちらに戻ってきてドヤ顔でこちらを見てくる。


「なんでドヤ顔なんですか」

「先輩ぽい気がする!後輩くんの友達に差し入れ」

「どんだけ先輩主張したいんですか」

「威厳は大事だよ?てことでがんばてねー!私は一人で頑張ってくるよ……」


 いきなりテンション下げないでほしい。


「ケーキできたら持ってけばいいんですか?」

「うん。そーして」

「わかりました。頑張ってください」

「ほーい」


 調理室から出た先輩を見送って中谷のところへ行く。


「疲れた」

「いい人じゃん」

「悪い人ではないね。サンドウィッチ食べる?」

「食べる食べる。てゆうかお茶交換してくれよ」

「なんでだよ」

「これ飲みかけだもん」

「あほだ」

「天然って言ってあげろよ」

「てかなんでこっちが飲みかけ飲まないといけないんだ」

「俺が飲むよりいいだろ」

「何がだよ……」

「まぁもう変えたけどな」


 いつのまにか取り替えてキャップを開けてごくごくと飲み出した。


「ゲスだな」

「文句は先輩へ」


 しゃーない。今更先輩と間接キスくらい気にしても無駄か。


「とっとと食べて続きしよう」

「結局飲むのかよ」

「喉乾いたからね」

「やっぱり付き合っ「てない」」

「そういうことにしておいてやる」

「変なこと言うなら仕事増やすぞ」

「ごめんなさい」


 先輩の差し入れを食べ終えて作業に取り掛かる。

ホームが8時40分で終わって9時で文化祭がスタートするから……。10時まで1時間になるのか。


「ホームルームまで時間がないぞー急げー」


 中谷に言われなくてもわかってるよ!

とりあえずカスタードが乗ってるのだけはホームルーム前に盛り終わりたい。

ひたすらシャインマスカットを乗せ続けてどうにか間に合った。


「終わった……」

「75個だけな。あと50個だね2時間40分で75個。後2時間たらず必要なんだが?単純計算で」


「でも後1時間しかないよ」

「無理だな」

「無理だね」

「どうするんだ」

「無理でもやるしかないのさ」

「悲しい世界だな」

「とりあえずホームルームいこうよ」

「そうだな。さっと終わらせてくれることを祈るしかないな」


 ホームルームで文化祭での注意事項とスケジュールを確認して早めに切り上がった。

ラッキー早くもどれそうだ。


「中谷と小鳥遊こっち手伝ってくれー!」


 やべ。捕まる前に戻らないと。


「悪い。もう予定入ってるんだ」

「まじかー。終わらねぇ!!暇人は何処ダァ」


 彼には悪いけど頑張ってください。

こっちのほうが終わらないんです。


「危なかったな」

「捕まったら終わりだよ」


 調理室に戻って作業に取り掛かりながら会話を続ける。


「これ終わっても今度は売りに行かないといけないんだろ?大変だな」

「もう帰りたい。だいたい金曜なのに1000個も売れるの……?」

「それは知らない」

「だよねぇとりあえず終わらせますか」

「これ切らないといけないんじゃ」

「そうだよ……」


 とりあえずひたすらやるしかないんだよね。

死ぬ気で終わらせてカット作業に入る。


「金粉使おうと思ってたけどどうつけよう」

「てきとうにぽんでいいだろ。悩んでる暇がないぞ」


 ごもっともです。

しゃーない上からてきとうに全体に振りかけとこう。

スプレーを使って高いところからふりまく。

それを8等分して箱に戻す。

カットして戻すカットして戻すの繰り返し。



「中谷ー後どんぐらい?」

「15」

「後10分」

「無理」

「頑張れ」


 早くカットして手伝ってやろう。

カットし終えて中谷と一緒に盛り付ける。

それをカットして最後の1つを箱に戻す。


「終わった……」

「長かった……」

「いま何分?」

「58分だとさ」

「間に合ったな」

「だね。って運ばないといけないじゃん!」

「あーそうか忘れてたわ」


 箱を持って出店の並んでいるところへ向かう。


「何処でやるのか知らないんだけど」


 店からお肉が焼ける匂いが漂ってくる。

焼き鳥や鉄板焼きにサイコロステーキ。肉多いなぁ。

デザートやってるところなんて他にあるのか?

あ、あったりんご飴とチョコバナナ。メジャーなやつはあるんだ。


「おいあれじゃね?」


 一番角に50人くらいの列が出来てきた。

なんじゃあれは。

近づいてみると先輩が一人で列の整理をしていた。


「なんですかこれは」

「あ!きたきた。お客さんだよーケーキがこないから待ってたの」

「サクラですか?」

「これはちゃんとしたお客さんだよ!」


 これは?てことは用意してるのか……?


「とりあえずこれどうすればいいんだ」

「あ、ごめん中谷。そこ置いといて」

「おっけー。それじゃ俺は教室戻るわ。また後で買いにくよ」

「わかった。ありがとね」


 手を振りながら校舎に戻っていく中谷を見送って先輩の指示を仰ぐ。


「寝てきてもいいですか?」

「いいわけないでしょー。早くここで注文と会計してよ。私はこっちでケーキ出したりするから」


 しゃーない暇になったら抜けられるだろうし少し頑張りますか。


「いらっしゃいませー」


 最初に来たのはカップルさん。


「タルト2つください」

「以上でいいですか?」

「えー。シフォンケーキも食べよーよ」


 横から彼女の横槍が入る。


「また後で買いにくればいいだろ。荷物になるし」

「売り切れたらどうするのさ!」

「沢山あるから大丈夫だって。タルトだけでお願いします」


 心配しなくても死ぬほど余るよ。


「はい。タルト2つで1000円になります」


 お金を受け取って次のお客さんに注文を聞く。

先輩もそれを聞きながら一瞬で紙皿にケーキを乗せて渡していた。

有能ですなぁ。


 どんどん捌いていくけど一向に終わらない。

おかしいと思って列を見ているといつのまにか凄い数の列になっていた。


「なんでこんなに来てるんだ……?馬鹿なんじゃ」

「後輩くんのケーキだからみんな狙ってんでしょー」

「仮にそうだとしてもなんでこんな早くに買いにきてるんですかね?」


 ご飯とか食べてからじゃないの普通。


「さぁ?無くなるからじゃないの?」

「腐るほどあるのに」

「みんなは知らないからねっ!」


 会話しながらも次々と処理していく。

結局こっちも忙しい。作ったらゆっくりできると思ってたのに。

でもまぁ先輩は凄い楽しそうだしいっか。

12時を回る頃にはお客さんも疎らになり余裕ができてきた。


「やっと落ち着きましたね」

「だねー。言った通りたくさん売れるでしょ!」

「世の中って怖いですね」

「ちゃんと張り紙とか宣伝したからね」

「そんなことしてたんですか」

「みんなに後輩くんの味を知ってもらいたくて。そしてそれを毎日独り占めしてるのを優越感に浸る」

「くだらない欲望ですね」


 それの何がいいんだろうか。さっぱりわからない……。


「後輩くんにはわからないさ!てことで私着替えてくるからよろしくね〜」

「え、ちょ!」


 そう言って校舎に入っていってしまった。

疎らって言ってもお客さんはくるんだけど……。




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