98-文化祭初日。
文化祭当日。朝6時に学校に行くとポツポツと人が来ていた。
みんな文化祭に力入れてるんだなぁ。
自分はそこまで文化祭に入れ込むような人じゃないから別世界の人間だ。
「と、思ってたんだけどなぁ……」
気がついたらこの時間に来て文化祭の準備しちゃってる。
門ではアーチをかけたり外では出店関係の設営したり。
実行委員会の人とか生徒会の人かな?こういう人たちのおかげで楽しい文化祭が行われるんだね。感謝感謝。そして先輩は太れ。
八つ当たりですけども。
「お、いたいた。おーい小鳥遊ー!」
「ちゃんと来てくれたか」
「呼んどいてそれは酷くねーか?こっちは死ぬほど眠いってのに」
欠伸をしながら文句を言ってくる中谷。
なんだかんだでちゃんと来るあたりいい奴だよ。
「ありがと。まぁとっとと終わらせて作ったケーキつまみ食いしよう」
「いいのかよ」
「数ぴったりだからだめなのかな」
「バレたら先輩に怒られるぞー?」
「なんか別に怒っても怖くないからいい気もする」
「俺まで怒られるのは嫌だぞ」
「ならやめとこ。始まったらどっかの店でなんか奢るよ」
「なら俺、吹奏楽のステーキがいい」
「吹奏楽でステーキ売るの……?」
なんていうかイメージが乖離してる。
「なんでも女子が多いだろ?それでそのギャップがなんたらとか言ってたな」
「なるほど。全くわからないけどステーキなら売れるね」
「一皿900円らしいぞ」
「たっか」
「ごちになります」
「その分働かせてやる……。とっとと行こう」
「ほーい」
調理室にやって来ると半分くらいの台が埋まっていた。
やっぱり当日はみんな使うよね。
「うへー混んでんなぁ」
「仕方ないよ。一番奥行こう」
「一台で足りる?」
「横も取っとこう」
「了解ー。どういう手順で作る?」
「とりあえず焼いたタルトに全部ジャムをのせて広げる。その上にカスタード最後に果物と生クリームとかかな?」
「俺は何すればいいんだ」
「ジャムを均等に乗せる」
「難しいことさせんな」
「簡単だよ一回やるから待ってて。大体スプーン3杯くらいだと思うけど……」
タルトの上にエルダーベリーのジャムを落として満遍なく広げてる。
うん。だいたいこんなもんだろ。
「分かった?」
「これくらいなら出来るわ。出来るけどこれ125個も?」
「そう。まぁ最初は2人でやって数ができたらカスタードに移るね」
「頼むわ。ホームルームまでに終わらないよなぁ」
「気力だよ……」
2人で文句を言いながらジャムを乗せていく。2人だと早いねありがたやありかたや。
50ほどジャムを乗せ終わったのでカスタードの作業にはいる事にした。
「じゃあカスタードやるね?」
「おっけ……」
中谷はこれが終わったらタルトを当分みたくなくなるんじゃないだろうか。可哀想に。
カスタードをジャムを乗せたタルトの上に広げていく。ジャムと混ざらないように慎重に……。
これは絞り袋でやったほうがいいな。袋に移してどんどん絞って最後に表面を均して終わりだ。
「ちょ追いつかれるじゃん」
「ゆっくりでいいよ。追いついたら別なことするから」
果物置いてナパージュ塗って生クリームとかもやらないといけないから手が開くことはない。
75個目くらいで追いついてしまったのでナパージュを作って冷ましている間に昨日切っておいたシャインマスカットを中心から花びらのように外側へ広げていく。
その隙間にぱらぱらとてきとうにエルダーベリーを散らしナパージュを塗り、泡立てた生クリームを空けておいた外周に沿って雫型に絞っていく。
「生クリームのところに桜のパウダーをふるってと」
「完成か?」
「うん。ほとんどねあとは金粉を……。あ花忘れてた」
食用花をちぎってナパージュにつけてタルトの上に散らしていく。
「その作業が長そう……」
「最初に置くと軽すぎてくっついちゃうからね」
「次の俺の仕事はそれかな」
「頼むよ」
中谷がジャムを終わらせるまでに出来るだけ追いつかないと。
果物ナパージュ生クリーム桜と工程が多い。
10時開店でホームルームに一旦抜けないといけないから……。終わるのかなぁ?
「ジャムが終わったぁ!!」
「お疲れ様」
くそ。まだ50くらいしか進んでないのに。やっぱり作業量的に無理があったか……。
「次は花びらか……」
「頼んだよ」
「ステーキだけじゃ足りない気がしてきた」
なんのことだろう聞こえないね。
「しょーがない。今度なんか作ってあげるよ」
「焼き菓子がいいな」
「注文までつけんのかよ」
「いいじゃねーかそれくらい。そんで小鳥遊のプリンスは今何してるの?」
「多分出店の設営だと思うけど……」
あとプリンスだと男だからね。王子様。
プリンセスが正解だよ馬鹿丸出し。
いやプリンセスでも間違いなんだけどね?
「1人でやってんの?大丈夫なのか」
「妹に手伝ってもらうって言ってたけど……」
蘭ちゃんね。蘭ちゃん大変そうだなぁ。
「妹って前家にいた子?今日金曜日だけど学校は」
「あ」
「あ、じゃない。2人して天然かよ」
「なら1人でやってるんだね」
「可哀想だな」
「いいんだよそれくらいの苦労させて」
「本人が聞いたら怒りそうだな」
「その数倍苦労してるからね。それくらいはいいでしょ」
「あ小鳥遊。あそこきてるぞ」
「え?誰が?」
「先輩」
中谷の指差す方を見ると先輩がこちらに向かって歩いてきていた。
まさか手伝えって?やめてほしい……。




