95-差し入れ。
今日は中谷もクラスの方で忙しく一人ぼっちで作業にはいる。
そーいえばクラスって何やるんだろうか?
真剣に話し合いに参加してなかったからよくわかってない。
決める時も作る時もやる時も参加しないとかみんなから嫌われそうだね。先輩みたいな立ち位置になっちゃいそう。
せめて当日役割がないことを祈ろう。あったら中谷にやってもらおっと。
アーモンドクリームを作ってタルトに入れた焼いていく。
「やっぱこっちは大量に作ってすぐ焼くだけだからそんなにかからないや」
焼いては取り出してを繰り返し最期の1つをオーブンに入れ終わると一息つく。
「疲れたー。明日はもっと楽だといいな……」
タルト全部焼けるまで少しの間休憩。オーブンが開かないと次がどっちにしろ作れないからね。
束の間の休息を待っていると調理室のドアが開いた。
中谷が手伝いに来てくれたのかな?
そう思ってドアの方に顔を向ける。
「あ、やっぱいた!やほ〜後輩くんっ」
なんだ先輩か。戦力じゃないのでがっかり。
顔に出ていてたのか先輩から抗議が飛んでくる。
「そんなに嫌そうな顔しなくてもいいじゃないの。せっかく様子見に来たのにさ!」
「何の用ですか?」
「冷たいね?!大変かなって 合間縫って見に来たんだよ!!」
「クラスの方で忙しいんですか?」
「ぼちぼちね。ってもわたしは別にいなくてもみんな楽しそうにやってるよ」
「何寂しいこと言ってるんですか。その一部でしょうが先輩も」
「わたしはぼっちだからね〜。後輩くんみたいにね?」
「僕は好きでここにぼっちな訳じゃありませんよ……」
「まぁまぁ実際ぼっちなんだから気にしないの!!そんなぼっちな後輩くんに差し入れ持って来たよ」
「なんですか?」
「購買で買ったおにぎりとお茶と昨日ケーキ屋で買っ
てきたクッキー」
「なんでケーキ屋でクッキーなんですか?そこは普通ケーキじゃないですか」
「いやー常温だから駄目かなって」
「本当は?」
「食べた」
「だと思いましたよ」
「よくお判りで。それじゃはい!これあげるから頑張ってね。辛くなったらいつでも電話するだよ?蘭に」
蘭ちゃんにかい。この時間普通学校じゃん……。
「なんで蘭ちゃんなんですか……」
「わたしにかけられても何にもならないし?」
「あぁ、納得しました」
「そこは納得しないで欲しかったな……。とりあえず頑張ってね!また明日くるよ〜ばいばいー」
そう言って教室に戻っていった。
「嵐が去った……」
それにしても先輩が差し入れなんて珍しいな。何か企んでるんじゃないのか?
まぁありがたくいただくけどさ。袋をからおにぎりを取り出す。
「鮭。おかか。梅。タラコ。昆布。ツナマヨ。多すぎないか?」
好みがわからないからたくさん買って来たのか?お茶もなぜか烏龍茶だし。
クッキーは結構大きい袋に入ってるのにそれに対して中身がスカスカな気がする……。
「絶対先輩食べてるよねこれ」
ケーキだけじゃなくてクッキーにまで手を出してたか。
袋を開けるとジャスミンの香りが漂う。
「しかもジャスミンかぁ……。苦手なの知らないもんね」
ジャスミンを嗅ぐと先週の夜の川での先輩の行動を思い出す。
なんだったんだろうね。特になんも言ってこないし。考えるとちょっと恥ずかしいので頭を振ってクッキーをしまいおにぎりを食べ始める。
気になるけど言ってこないから聞くのもなんか恥ずかしいし。真相と心理は謎のままだね。
おにぎりを食べ終わってクッキーを齧りながらシフォンケーキをひたすら焼き続ける。
焼いて冷ましたら18等分にカットしておく。
「これで明日先輩が全部包装するだけだ」
忘れないでちゃんとやってくれるかな。さっきの言い方だと様子見に来るだけみたいな感じだったけど。放課後にでもやるのかな。
まぁそこは先輩に任せよう。今日は帰りに飾り付け用のエルダーベリーをとって帰らないと。
明日中谷が手伝ってくれないかな。




