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1-出会い。
「もうこんな時間か……。おもったよりかかりすぎちゃったな」
そう言って足早に教室に荷物を取りに行きコートを羽織り階段を駆ける。
窓から見える景色はオレンジ一色だ。
玄関へ向かって歩いていると、奥の教室から綺麗な旋律が流れてくる。
これはバイオリン?でもなんでこんな時間に。そう考えてお昼に友達が言っていたことを思い出す。
「この学校には凄く楽器がうまい先輩がいるらしい」と。
なんでもコンクールで優勝するほどの実力だとか。
そんなことを考えながらも足は音の奏でる方へと進んでいく。
少し覗くだけ、そう自分に言い訳をし
半開きになっているドアをのぞきこむと
――ぎいいいいぃっ
と、耳を裂くような大きな音が教室から響き渡る。
その突然の騒音に驚き後ろに倒れこんでしまう
するとその音に気づいた発生源はこちらに目を向ける。
「誰……?」
これが噂の音羽先輩との初めての出会いだった。