第8章 4話
いよいよ作戦は決行された。
タイムリミットは秋葉原ダイビルに入れる19時から実験が失敗する20時までの約1時間。
すでに順番は頭の中に入っている。
まずは矢野君の所から鍵のかかっていない部屋に入る。
ここにはスイッチがある。
もちろんこれだけだと単なるスイッチだけど、これが他の所にも影響を受けるのが重要な事。
次に水谷優子さん。
そして矢野理香さんと同じ事をやる。
これらは肝心の電力を低下させる為のスイッチ。
さすがに3つも落とせば実験に支障が出る。
次に山田さんが部屋に残されているパソコンに暗号を打ち込む。
これは研究所へのセキュリティを突破するのに必要。
それが一条さんの所にも置かれているので、移動させる。
最後に。
それを桜崎さんが受け取って終了。
まさに時空を超えたパズルを解いた気分。
桜崎さんの行動により実験は停止。
ウィルスに侵され二度と実験が出来ない状態にまでなった。
そこまで確認してから再び山田さんの所に戻る。
「これで、全て終わったわ」
そろそろ20時になろうとしている。
けれど研究所は原因不明のウィルスにより混乱している。
私達がいる事すら問題にしていない。
そんな余裕など無い状態になっているから。
「ありがとう。あなたがいなければどうなっていたことか」
「それは私の台詞よ。坂本さん、あなたがいなければこの世界は延々同じ時間を繰り返す時間の檻に閉じ込められていた状態になっていた。しかもそうなっているとも知らずに」
確かに、それを認識出来るのは同じ日に帰れる私だけ。
目の前の景色がぼやけてくる!?
「どうやら、時空が正常に戻っているみたいね。これで私とも二度と会う事も無いでしょう」
そうか。
そもそも、私のいた所では彼女に会った事すら無かった。
存在しない人間なんだわ。
「ありがとう!私はずっと忘れない!」
はっと気づくと。
そこは夜の秋葉原だった。
ダイビルの外。
時間を見る。
9月23日の20時30分を示している。
ようやく20時以降の時間へとたどり着いた。
そこには何事もない、平穏な秋葉原があった。
電話が鳴る。
「もしもし?」
「凛か。すまない。原因不明のウィルスのせいで実験が二度と出来なくなってしまった。残念だが今日はもう帰っていいぞ」
そうか。
この世界とも繋がっていた証拠。
そして。
それが全て消え去った証拠でもある。
「分かったわ。気を付けて帰るから、お父さんも気を付けてね」
そう言ってスマホを切った。
そこで気づいてメモのアプリを起動する。
だけど、そこには何も無かった。
地下の研究所のメモを残していたのに。
まるでそんな事なんて無かったかのような感じ。




