第1章 5話
-一条みなみの場合-
秋葉原に到着。
まだちょっと時間あるかな?
でもバイトの時間に遅刻する訳にはいかない。
遊ぶ余裕は無いな。
つくづく、この街は不思議な街だなと思っている。
何十年も前から続く怪しいお店がありながらも。
高層オフィスビルも存在している。
アニメやゲームなんかのオタク的なお店がありながらも。
綺麗でお洒落な店も存在する。
まさにいろんな要素を詰め込んだ街のように見える。
だが、ここは昔から電気街として有名で。
その手の店はあちこちにある。
だからこそなのか、この街はあまり他では見られないような店も存在する。
その一つが、あたいのバイトしている上崎板金。
普通板金屋って言うと車の修理工場とか、あるいは家の建築に使う部品を扱うかのどちらかという認識が多い。
だがここはそんな大きな物を扱う所じゃない。
身近な所にも鉄やアルミ等固い部品を扱う製品はある。
おもに家電製品がそうだ。
中身に関しちゃメーカーに修理するのが早いだろうけど。
ちょっと凹んだとか、傷がついてしまったのを直すのが主な仕事。
あたいは好きが高じて配線なんかも修理出来たりするけど。
でもここはあくまで板金屋だ。
小さいのは手のひらサイズなのもあれば、大きな物だと自転車も扱う。
多種多様で、案外需要はある。
それはここが秋葉原だからだ。
ここはオタクという好きな物を大事にする人達が集まる場所。
秋葉原だからこそ、成り立つとも言える。
あたいはここでアルバイトをしながら、技術を学んでいる。
もちろん、将来は板金屋になる事。
両親には内緒にしているけど。
それが、あたいの夢。
今日も、ちょっと早めに到着。
いつも時間を持て余し気味なんだけど、だからといって遊ぶほどの余裕は無い。
この街ではちょっと遊んだだけで10分や20分あっという間に経ってしまう。
それで遅刻するなんて時間管理が出来ていないと言われてもしょうがないし。
アルバイトとはいえ、仕事をする以上遅刻なんて厳禁なのは当たり前だ。
こういうのは、少し早いくらいでも罰は当たらない。
さて。
今日は何があるのかな?
今日もいろんな依頼品が並んである。
こういうのは内容ではなく、単純に持ち込まれた順に処理をする。
そうでないと、時間がかかる物がもっと遅れてしまう。
それは依頼された時には必ず説明している。
だからこそ、あたいも早く来た順に修理する。
まずは目覚ましか。
高い所から落としたのか、でこぼこに曲がっている。
内面にはキャラクターの絵柄が描いてあるから、おそらく既製品ではないだろう。
しかも下手に動いているから修理にも出せない。
だからこそ、こういう店が重宝される。
よし。
まずはこれから。




