第3章 9話
-矢野里香の場合-
ふぅ。
慣れない事はするもんじゃなかったなぁ。
慌てて渡ろうとしたら人にぶつかるなんて。
わざとじゃないけど、罪悪感は残っている。
そうだ。
まだ調査が終わっていない。
確か住所はあっちの方向。
あれ?
私の目線の先に、知っている人物によく似た人がいた。
いつも見る服装とは違うし、帽子をかぶっているしおまけに眼鏡もかけている。
もしかして変装?
そうだとしたらなんで?
これは怪しい。
ちょうど行先と同じ方向へ歩いている。
可能性は高い。
よーし。
こっそり後を追ってみよう。
大丈夫。
私以外にも同じ方法へ歩いている人は沢山いるし、万が一私に気づいたとしても偶然を装えばいい。
一番まずいのは尾行しているって事に気づかれる事。
そんなの怪しいに決まっている。
本当は向こうの方が怪しいんだけど。
でも、まだ確証は無い。
あくまで可能性があるってだけの話。
だけど私は人を尾行しているその事実だけで怪しい。
何の確証もない、単なる偶然かもしれない。
そんな僅かな事で尾行している。
でも、なんとなくだけど。
今回の犯人のような気がする。
たぶん、気づいた時にどんな行動を取るかで決まる。
もし私に気づいても普通に挨拶すれば、犯人でないかもしれない。
だけど逆に逃げればほぼ確定。
あまり気が進まないけれど。
他に当てもないし。
この推理が外れてくれればそれで良し。
私の先生を困らせるなんて事は今回だけにしてほしい。
だからこそ。
まずは身内の可能性を潰す。
曲がり角をまがった。
慌てずそのままのスピードで。
ゆっくりとその角を回る。
え!?
走ってる!?
これは。
逃げた!
慌てて追いかける。
これはまず間違いない。
あの人が犯人!
くっ。
中央通りを走っているせいか、人込みが微妙に邪魔をする。
だけど、それはあっちも同じはず。
そんな時だった。
中央通りの道路からもの凄い爆音と爆風が吹いて来たのだった!




