第3章 18:00
-矢野摩耶の場合-
何やら衝撃があった。
どうも路肩に乗り上げ、止めてあった自転車を吹き飛ばしたようだ。
「ちゃんと前を見て運転しろ!」
バスジャック犯の一人が声を荒げる。
確かに今のは危なかった。
もし今の衝撃で、この爆弾が爆発したら死ぬ所だった。
衝撃で爆発?
何か引っかかる。
なんか一度体験しているような気がする。
そうだ。
今から約1時間半ほど前だ。
あの時に不思議な感覚を体験した気がしていたんだ。
どうにも、今日は変な事が起こる日だ。
そもそもこいつらは何が目的なんだ?
あれ?
今通り過ぎた建物には見覚えがあった。
中央通りにあるドン・キホーテ。
そう言えば何度も見ていた気がする。
緊張していて、外をゆっくり見ている余裕が無かったから気づくのが遅れたけど。
ぐるぐると同じ所を回っている。
なんで?
この時間はだいぶ渋滞も解消されたのか、バスの進むスピードは速くなっている。
でも、同じ所を移動しているだけでは渋滞だろうが意味が無い。
どこかへ向かっていたんじゃないのか?
目的の場所が無いとなると。
次に考えられるのは。
もしかして囮?
本来は警察が来て事件にもなっているはずだがそれが無い。
どんなに分からないように取り繕っていたとしても、これだけ同じ場所をぐるぐる回るバスがいたら、怪しいことこの上ない。
それなのに、未だに警察の姿すら見えない。
おそらく何かの時間稼ぎの為に、こいつらは囮になっていると考えられる。
同じ所を移動しているなんて、見つけて下さいと言っているようなもんだ。
そうなると、時間さえ経てば解放される可能性が高い。
注意さえ引きつければいいんであって、無駄に人質を殺すのは取引の材料が減るだけだ。
本来であれば、警察との交渉に使う為に僕達が捉えられているって訳だ。
だが、それが一向に行われない。
そういう意味では、とても変な事が起きている。
あっ。
目の前に車が横切る。
まずい。
信号を無視した車がバスの目の前にあった。
ガン!
もの凄い衝撃が来る!
「くっ!」
その次の瞬間。
とてつもなくまずい状況だと思った。
そう。
爆弾がバスの先頭へともの凄い勢いで滑っていく。
そのまま料金箱へとぶつかる。
その次に起こる事は容易に想像出来た。
爆弾が光ったと思ったら。
全身は熱風と爆風に巻き込まれていた。




