第2章 11話
-水谷優子の場合-
午後5時を過ぎた。
仕事帰りのサラリーマンを狙うならこれからがチャンス。
サラリーマンは学生とは持っているお金が違う。
全員が全員余裕があるとは思っていないが。
ちょっと贅沢する時に私達の店を選んでもらいたい。
だからこそ、これからが本当の勝負。
必死にチラシを配る。
だいぶ大人の人達も増えて来た。
まずこの30分、どれだけ貰ってくれるか。
それに懸かっていると言っても過言じゃない。
どんどん渡そうとする。
当然、貰ってくれる人は少ない。
でも、これで落ち込んでいる場合じゃない。
そんな暇は無い。
次々と渡す。
落ち込むのは最終的に駄目だった時にする事。
今はまだその途中。
一喜一憂するくらいなら、この量に対して立ち向かう方がマシ。
どうせチラシは10人渡そうとして2~3人渡せればいい方。
そう割り切って次々と挑戦する。
当然、この時間を狙っているのは私達だけじゃない。
ちょっと離れた所には別のメイドカフェの人も見える。
みんな必死なのは変わらない。
あの子達だって、今日来る客の数でお店が続けられるかの勝負をしている。
若干疲れて来た。
けど、休んでいる場合でもない。
今は一人でも多くの人に目を止めて貰わないと。
そして気になった人がお店に来てくれる事を祈らないと。
そう必死に頑張っても。
10分もすれば疲労で動かなくなる。
チラシ配りは体力勝負。
30分ずっと出来る訳が無い。
ちょっと休憩。
そこで自分の持ち分のチラシを見る。
全然減っている気配が無い。
そう。
さっきからチラシを持ってくれる人が少なく感じる。
当然、見向きもしない人がいるのはしょうがない。
けど。
関心を持っている人すらいない感じがする。
いつもだったら、ここまで少ないって事は無い。
焦る気持ちが抑えられない。
とは言っても限界はある。
人の数が減って来た。
まずい。
そろそろ帰宅ラッシュも終わろうとしている。
ここを逃すと、もう今日のチャンスは無い。
いや。
もう終わっているも同然。
捌ききれなかったチラシが、重くのしかかる。
もう駄目かもしれない。
いくら頑張っても結果が出せなかった。
辞めて責任を取る事を考えた方がいいかも。




