第2章 10話
ふぅ。
本日の料理教室終了。
さて、これで家に帰れる。
とは思ったけど。
どうしても引っかかってる事がある。
もちろん、今回の事件。
食材を盗むという、かなりの珍事件ではあるものの。
犯罪であるのは間違いない。
そして。
もう一つ不思議な事が起きている。
買い物をする前には教室にいるのを見たけれど、今この場にいない人。
先生は急用が出来たから帰らせたというけれど。
怪しい事この上ない。
普通は事件が起きると共に姿を消せば、まず犯人だろうと思われるけど。
彼女は事件発覚の時にはまだ教室にいた。
けれど、その後に帰ったのは怪しい。
当然、そのまま逃げだすのが安全だとは思うけど。
その場にいなければ犯人ですって言ってるようなもの。
だから予め何処かに隠しておいてから、内部の人間じゃないと思わせておいて帰るふりをしたとすれば?
4人分の材料とはいえ、そんなに量は無いから隠すのも難しい話じゃない。
ビニール袋にでも入れて、地中に埋めるだけで簡単に隠す事が出来る。
もしかしたら。
私はそれとなく彼女の住所を聞いた。
彼女の名前は本田陽子。
秋葉原駅の南東の方角に家があるみたい。
とりあえず行ってみよう。
取り越し苦労ならそれでいい。
でも、どうにも怪しい雰囲気は漂っている。
ちょっと近くを寄るだけにしておこう。
それなら万が一見つかっても偶然を装える。
よし。
行ってみよう。
まだまだ日は沈んではいない。
そろそろ午後6時になろうかという時間だけど、夏の夜は遅い。
日がまだ明るい内に調査をしてみよう。
暗くなったら、さすがに怖い。
そうなった時は諦めよう。
そうやって気持ちを抑える。
あっ。
信号が変わる。
思わず足が走り出す。
そんなに急ぐつもりじゃなかったけど。
無意識に動いていた。
「きゃ!」
誰かにぶつかってしまった。
いたた。
「ご、ごめんなさい!」
無常にも信号は赤になっていた。




