第2章 5話
-一条みなみの場合-
え?
今撃たれた感覚はあった。
けど、どこも撃たれていない。
変な感覚。
もの凄い激痛も感じていた。
心臓のある部分を貫通していたから、本当に撃たれていたのなら死んでいるはず。
気のせい?
まるで白昼夢でも見ていたかのよう。
悪夢を見ていて起きてもなんとなく記憶がおぼろげに残っているような。
そんな感じ。
そうだとすると、私はかなり呑気って事になるわね。
未だにヤクザに追われているこの状況。
夢なんて見ている暇は無い。
しかしさっきから逃げていて不思議な事がもう一つ。
人の姿が見えない。
まだ17時頃だから、観光客すらまったくいないなんてあり得ない。
なのに、逃げても逃げても見かけない。
一体、この街で何が起きているっていうの?
私に降りかかった悪夢だけでなく。
何か別の悪意があるかのよう。
とにかく。
逃げなくては。
「あっ!一条ちゃん」
え?
あれは三日月兎の店長さん。
良く利用しているお店で、店長とも顔見知りの仲。
「何か大変そうだね?うちで匿ってあげよう」
「いいの?」
後ろを振り返る。
ヤクザの姿は見えない。
今がチャンス。
「お願い!誰が来ても通り過ぎたって言ってもらえる?」
「分かった!」
これが警察だったらもしかしたら引き渡されていたかもしれない。
けど相手はヤクザ。
普通の一般市民が快く協力しようという相手ではない。
無事に匿ってくれる可能性はかなり高い。
きちんと荷物の陰に隠れて。
これでかなり奥まで踏み込まないと、まず分からない。
しばらく息をひそめる。
走る音が聞こえる!
来た!!
「おい!ここに小娘が来なかったか?」
「さあ?何か走ってる子なら、この前を通り過ぎたみたいだけど」
うまい。
変に細かい情報を言うと知っている人だと思われる。
曖昧だけど何か見たという情報を与える事で、やり過ごすって訳ね。
「そうか。正直に言ってくれると思っていたんだが」
え?
ドン!!
発砲音!?
なんで?
「そこに隠れているのは分かってる」
どうして!?
「俺達から逃げた罰だ」
どうしてここが!?
ドン!!
再び発砲音が聞こえたと思ったら、視界が真っ暗になった。




