第1章 12話
藤崎さんと二人でビラ配りを行う。
おそらくディナーサービスの為のお客を呼び込む為でしょう。
平日でもこのサービスのおかげで17時からはかなり混むほどの人気が出ている。
それでも、今のままだと赤字は避けられないみたい。
紛失した金額というのは、それほど大きい。
そもそもサービス業で利益を出すってのは、かなり難しい。
あまり高い値段を設定すると、お客がなかなか来なくなる。
逆にギリギリにしすぎると、数を捌かないと利益が出せない。
その塩梅が難しい。
もちろん、それはメイド喫茶であろうとも同じ。
単なるジュースでも高い料金が設定されているのは、そこにメイドのサービスが付くから。
つまり、他の店よりもお客一人の拘束時間が存在する。
そこを疎かにすると二度と来なくなるために手が抜けない。
でも数を捌かないといけない。
そんな苦労がメイド喫茶にはある。
そこの辺りも、まだ勤務日数が浅い私でも分かって来た事。
秋葉原には他にも沢山メイド喫茶があるために、あまり殿様商売は出来ない。
だから少しずつ利益を回収する。
その為万単位の損失となると、それを回収するのはそう簡単な事じゃない。
だからこそ、このビラ配りも重要なお仕事。
たくさんあるメイド喫茶の中から私達のお店を選んで欲しいから。
まず知ってもらわなきゃ、来るなんて事は不可能。
知った後に来るかどうかまでは確約は出来ない。
せいぜい10枚配って一人くればいい方。
それぐらい、秋葉原は激戦区とも言える。
でも秋葉原だからこそ、質の高いサービスを出せるのも事実。
他のあまり進出していない所だと、手を抜いても客が来るのでサービスが疎かになりやすい。
そうやって自滅するお店は後を絶たないと聞く。
ここは大変だからこそ、手を抜けないってのがある。
そんなお店に働く事が出来て、凄く幸運だと思っている。
普段の生徒会長の仕事をしていると、厳しく接しなければならない場面が多い。
学校の全生徒の中から、生徒の中で一番の権限を持っているからこそ、きちんとした姿を見せなきゃいけない。
そんなストレスから解放され、ただ目の前の人を楽しませる事が出来る。
そんな仕事に巡り合えて良かったと思っている。
だからこそ、なんとか手助けをしたい。
ふぅ。
20分ほど配ったけれど、そろそろディナーサービスの時間が迫って来ている。
でも、まだまだこれから。
その次の瞬間だった。
パァーン!と、どこかで破裂音が聞こえる。
しかも尋常じゃない響き方。
まるで銃声音のように。
「なっ、なに!?」
何か事件?
わりと、そう遠い距離ではなさそうだけど。
念のために警察に電話しよう。
さすがに周りもざわついているし、何か違う音を聞き間違えたという事は無い。
これでよし。
さて、続きを再開しよう。




