第1章 10話
それにしても不思議な話ね。
材料が搬入してから事件が発覚するまで、それほど時間の猶予は無い。
せいぜい2時間ほど。
そんなピンポイントで材料を盗み出す人がいるなんて。
しかもお金には手を付けていない。
あくまで食材が目当て。
ここが一番不思議な所。
お金を盗めば他にも利用出来るし、そもそも持ち運びが楽。
大きくて重い食材をわざわざ狙うっていうのが不思議。
確かにお金は金庫の中に保管されていて、他人が簡単に盗める状況ではないし、四六時中冷蔵庫を見張ってるって訳でも無い。
それでもわざわざ食材を狙うのかなぁ?
そこが不思議な所。
人目もあちこちにあるから、かなり難しいはずなのに。
でも、そうなると犯人は私達生徒の中にいるって事になる。
当然、今日料理教室があるって知ってる人は少ない。
赤の他人がたまたま侵入して盗んだってのは考えずらい。
知ってる人の計画的な犯行と考えるのが自然。
となると、当然その目的も存在する。
理由も無く、大量の食材を盗むとは思えないから。
あれだけの量を盗んだって事は、少なくとも一人暮らしもしくは少人数家族の人って訳じゃない。
最低10人近くの食材なのだから、大家族の人?
でも、そんな話は聞いた事が無い。
そもそも大家族の人なら家の手伝いで忙しいはず。
わざわざここへ習いに来るものかなぁ。
しかも家族の為に盗む?
どうやって入手したか絶対聞かれると思うんだけど。
それなら完成した料理を、頼んで譲って貰う方を取ると思う。
それなら持ち運びはだいぶ楽になるし、手間も省けるし理由も説明出来る。
なぜ盗むのか?
よく分からない。
気が付けば秋葉原の大通り。
中央通りに来ている。
この反対側にワイズマートAKIBACHI店がある。
秋葉原にあるスーパーで、もちろんいろんな食材を扱っている。
今の時間帯ならまだ混んでるとは思えないし。
さっさと買って戻って来なきゃ。
まずは食材を買うのが目的。
この事件の犯人を見つけるのは警察の仕事。
ついつい気になっちゃったけど。
私があれこれ考えてもしょうがないわよね。
自分に言い聞かせる。
こういう事につい首を突っ込むのは、私の悪い癖。
どうにも気になって自分で調べたくなる。
それで何度も大変な目に合った事か。
それでも好奇心は抑えられない。
でも今回は警察がいる。
彼らに任せた方がいい。
パーン!!
え?
何、今の!?
まさか銃声音?
この秋葉原で!?
周りのみんなもざわついているから、幻聴じゃない。
待って。
こんな不思議な事件があった直後に銃声音!?
偶然じゃないかも。
まさか、何かヤクザみたいのが関わっているとか!?
冗談じゃないわ!
あの料理教室にも戻れない!
もし戻って、怖い男たちがいたら。
もう今日は帰ろう。
お金は郵便で送る事にして、もう二度とあそこへ行くのは止めよう。
さすがに関わり合いになりたくないわ。




