秋葉原にいる6人の男女
第1章 9月23日16:00
-矢野摩耶の場合-
ふぅ。
やっと秋葉原に到着だ。
学校が早く終わって、久しぶりに遊びに来た。
僕はそれほど濃いオタクだとは思っていないが、ここに遊びに来るぐらいのオタクだとは思っている。
ここは特別な場所だ。
アニメでもゲームでも、探せばまず間違いなく出てくる。
ここに無いのはそれこそネットを使っても難しいだろう。
それぐらい濃くて多彩な物が揃っている。
まずはどうするか。
ゲーセンで遊びたいけど、まずは買い物が優先かな?
先に買われでもしたらお終いだからなぁ。
ここでは自分しか求めていないと思ってる物でも、競争が起こる街だ。
うかうかしていられない。
ただ目的の店はここから遠い。
歩いて行ってもいいが、学校が終わって一旦家に荷物を置いてすぐに来たから、まだ疲れが残っている。
お金はまだ余裕があるし、市バスを使おう。
210円ならそう高い料金でもない。
この時間はやや混んでいるが、会社帰りのサラリーマンはまだいない。
そこそこは開いてるから座るのも、そう難しい事じゃない。
そもそも、この路線は秋葉原をぐるっと回って南へ行くだけのバス。
平日のこの時間ならまだ余裕で座れる。
ふぅ。
なんとか一息つく。
まずはアニメのブルーレイBOXが残ってるかチェックだな。
今更昔のアニメにハマって買うとは思いもしなかったが。
そういう場合でも、色々揃ってるのがこの街だ。
まずは何処から回ろうか。
ん?
何やら大きなバックを持った大男が二人乗り込んで来た。
一目で異様な雰囲気と分かる。
なんだ?
「お前ら!静かにしてな!」
なに!?
懐から拳銃を取り出した。
「発進しろ!」
まさか。
バスジャック!?
「いいか。お前ら妙な真似はするなよ。死にたくなければな」
そう言って、大きなバックのジッパーを開ける。
なんだ!?
ダイナマイトのような丸い筒が6本束ねられている。
その上に時計のタイマーがある。
あれが、いわゆる時限爆弾って奴か?
「携帯を取り出すんじゃねぇぞ?もし何かに通話していたりメール等を送るような仕草をしてみろ。こいつが爆発する」
なに!?
「自分だけが死ぬんじゃねぇぞ?自分の勝手でみんなが犠牲になるんだ。それが嫌なら大人しく座ってな」
なんて奴だ。
これじゃ、確かに迂闊な事は出来なくなってしまった。