◆美少女戦士なの?
◆美少女戦士なの?
「あれからどのくらいの時間が経ったのかな?」
木花は、洞窟に閉じ込められてから、時間の感覚が麻痺している。
家を出てから、短い間にいろいろなことが起こっていて、自分の頭では処理しきれていないのだと思う。
いま起きていることも、夢なのか現実なのか判断できていない。
不思議な衣を纏い、腰から太刀を下げた自分は、これからどうなるのだろう。
目の前を歩いている、サクヤという神様も信用してよいのだろうか。
ただ洞窟の中をひたすら歩いていると、さまざまな思いが次から次へと湧いてくる。
「ねぇ、サクヤ。 さっき聞いたことって本当なの?」
「ふふっ 木花ちゃん。 神様は必要なとき以外、嘘はつかないわよ」
「って、神様も必要なら嘘をつくんかい!」
あたしは思わず突っ込を入れる。
サクヤが教えてくれたことは、到底信じられないし、それを自分が成し遂げなければならないなんて出来っこない。
簡単に言うとなんでもあたしは、これから黄泉の国へ行き、伊邪那美命さんをそこから連れ出して、旦那様のところまで送っていかなければならないらしい。
そして黄泉の国には、八つはしらの雷神と黄泉軍という軍隊が守っているので、それと闘わなくてはいけないのだそうだ。
「ねぇ、サクヤ。 いまどき刀で戦うのっておかしいっしょ。 せめてマシンガンとかはないの?」
「あらぁ・・神様の世界では太刀は普通の武器よぅ」
「あたし戦国大名じゃないし。 マジでやりたくないんですけどぉ」
「ところで、刀には名を付けてあげたのかしら?」
「まだ付けてな~い」
話しをそらされて、あたしは少し不貞腐れてみせる。
「サクヤは、テレビで美少女戦士のアニメとか見たことはないの? ああいうのならモチベーションってのもあがるんじゃな~い」
「露出が多いのはダメですよ。 ダメージも大きいし。 体に傷がつくのは嫌でしょ」
「って、見てるし!」
「ほらっ、もうすぐ黄泉の国との境に着きます」
「あの坂のあたり?」
「そうです。 あそこは黄泉比良坂というところですよ」
いよいよ戦わなくっちゃいけなくなるんだ。
あたしは、ゴクリと唾をのみ込んだ。