◆早く助けてーー!
◆早く助けてーー!
ピシャッ
ドドォーン
「キャーーッ」
あたしが洞窟に駆け込んだと同時に、洞窟の入り口に雷が落ちた。
思わず耳を塞いでしゃがみ込んだけど、目を開けたらそこは真っ暗闇だった。
「あれっ? お兄ちゃーん。 どこーー?」
ここって、洞窟の中だよね? ちょっ・・どういう事?
真っ暗で何も見えない。
ポケットに入れておいたスマホを取り出して、電源ボタンを押す。
スマホの画面から出る光では、自分の周りがほんの少し明るくなるだけで、洞窟の壁までは届かない。
とりあえず、通信ソフトでお兄ちゃんにメッセージを送る。
「え~と」
ポチ ポチ
『おにい。 いまどこ?』
しばらく画面をじっと見ながら待ってみるが、返事は返ってこない。
よく見れば、圏外が表示されている。
「うそっ! どうしよう」
あたしは初めて、事の深刻さに気づき動揺する。
「ここって・・幽霊とかでないよね」
洞窟内のひんやりした空気で、背筋が寒い。
どこか他に出口とかあるかな? そう思っても、奥に進む勇気がでない。
「こ、これは、あれだよね。 遭難したらその場を動かずに助けが来るまでじっとしているってやつでしょ。 やっぱり。 そ、そうよね」
スマホの電池も、いざという時のために温存しておかなければならないが、点けっ放しでは長くはもたない。
ここは、もはや陽の光は射して来ない場所になってしまったのだ。
でも、スマホの電源を切れば、真っ暗闇に一人で耐えなければならない。
光を完全に遮断した真っ暗闇の部屋に閉じ込めるという拷問も存在するらしい。
ましてや、木花は女子中学生なのだ。
「あ゛ー もう! お兄ちゃんの言うとおり、家で待ってればよかったよーー!」
あたしは、一人で洞窟に閉じ込められた怖さもあって、わざと大きな声を出してみる。
ふわっ すーーっ
「キャーッ」
一瞬、背後で何かが動いた気配がして、あたしは悲鳴をあげた。
「だ、誰? 誰かいるの? 怖い、怖い、怖いよー おにい 早く助けてーー!」
叫びながら、気が付けば涙も滲んでいる。 あたしは、早くもパニックに陥っていた。