◆黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)の戦い
◆黄泉比良坂の戦い
いま、あたしたちは、黄泉比良坂を下っている。
サクヤに言われたとおり、腰に下げた太刀には「天羽涼風」という名前を授けた。
あたしが中二だからって、中二病っぽい名前なんて思わないでほしい。
だって、真剣に悩んでつけた名前なんだ。
「木花ちゃん・・」
サクヤが小さな声であたしに声をかけたので、その場で足をとめる。
「来るわよ。 気を付けて。 絶対にわたしの前に出ないようにね。 あと、わたしの真後ろには決して近づいてはダメだから」
「はい、わかりました」
サクヤの背後でサクヤの太刀が届く範囲。 あたしがその中に入れば、敵味方に関係なく刃が飛んでくる。
サクヤはそれ(同士討ち)を言いたかったのだと瞬時に理解する。
ハァーーーッ!!
サクヤが目に追えないスピードで跳躍し、敵に躍りかかる。
ヤァーーーーッ!
サクヤの太刀が振り下ろされた次の瞬間、黄泉軍の幾つかが、あっと言う間に消滅する。
グギョーッ
生まれてから一度も聞いたことがないような奇声を発し別の方角から、あたし目掛けて黄泉軍が押し寄せて来た。
こぉーーんのぉーー!! バカ兄ィーーーッツ!!
エッチなことを言ってあたしを困らせる、おにぃをぶん殴るイメ-ジで敵に一撃を浴びせる。
シューーーッ
天羽涼風の衝撃を受けた、黄泉軍の10匹が瞬く間に消し飛ぶ。
「やったーーー♪」
喜ぶのも束の間、すぐさま第二波が襲い掛かって来る。
その数は、おおよそ100近い。
あたしは、サクヤから教えてもらったとおり、衣の周りに風の流れを起こして、防御を厚くする。
そのおかげで、黄泉軍の兵士たちが次々に斬り込んでくるが、その衝撃を受けるだけで体は傷付かずに何とか防げている。
ただし、一撃を受ける度に木刀で殴りつけられたような激痛が体に走る。
ああっ、痛ぁーーーっ!
ぐっ
う・・うっう・・
圧倒的な敵の数により、たちまち周りを囲まれ、あたしは早くも大ピンチを迎える。
おにい、早く助けてに来て、お願い。
心が早くも折れそうになる。
サクヤは、どうしているかと辺りを見回すと、ところどころで金属がぶつかり合う音と火花が散っている。
おそらく、ものすごい速さで戦いが行われているのだろう。
サクヤは手一杯で、あたしの方まで手が回わりそうにない。
あたしは、陸上部の俊足を活かし、すぐさま洞窟の岩肌を背にして防御態勢を取った。
後ろからの攻撃を受けないだけ、防御に集中できるが、このままでは長くは持たないだろう。
もうダメかも知れない。
ドォーーン
そう思った時、あたしの正面にいた黄泉軍がいっきに吹き飛んだ。
「木花ちゃん。 遅くなってごめんなさい」
サクヤが助けに戻って来てくれたのだ。
「遅いよ。 ほんとにもうダメかと思った」
「敵の数も三分の一くらいになったから、あと少しの辛抱よ。 がんばって」
ズバーーンッ
サクヤがそう教えてくれた直後、もの凄い閃光と共に今度はサクヤが吹き飛ばされる。
「あぁっ・・サクヤァーー・・」
そして、辺りに沸き立つ粉塵の中から、角のある妖艶なお姉さんが現れた。
「火雷の相手をするのは、おまえか!! ちょうどよい。 黄泉比良坂を下ればそこは黄泉の世界ぞ! 直ぐにあの世に送ってやるわ」
あわわわ・・・
これは、コノハの人生最大のピンチですぅーーー
次回、「火雷と八上比売」へ続く




