◆黄泉軍(ヨモツイクサ)
◆黄泉軍
「タケルさん。 先ほど言い忘れたことがあります」
ウズメが珍しく真顔で話しかけてきた。
「はいはい。 それは、俺にとっていいことでしょうか?」
「実は八つはしらの雷神の他に、黄泉軍という軍隊がいます。 こいつらは数が半端なく多い」
ウズメは両手の十本の指をだして、数が多いアピールをしてくる。
「つまり、体力勝負ってことか」
「ピンポ~ンじゃない。 ブッブー 半分正解です」
「それ、さっきと同じ」
「残り半分を十秒で答えてください」
「なにクイズみたいになってんだよ。 ふざけんな」
9
8
7
あぁ そんな、心の準備ができないうちに、即カウントダウンなんすか。
俺は、追いつめられる。
「わ、分かった! 戦車とか近代兵器を持ってる」
「カウントした、わたしがバカでした」
どこからだしたか、ウズメはスプーンを投げた。
くそっ、もうやけくそだ。
「ハハハ、ウズメのバ~カ」
俺はちょっと壊れかける。
キッ
ウズメの目力は凄い。 目から何かいけないものが出てるんじゃないだろうか。
「今直ぐ消滅させて差し上げましょうか」
怖いひと言もオマケに付いてくる。
「いやだなぁ、まだ冗談が通じないなんて。 俺たち付き合ってからずいぶん経つよね」
俺は、ぜひさっきの仕返しがしたかった。 ここで是非にでも巻き返しておきたい。
「しょうも無いですね。 冗談につきあっている暇はありません。 古事記には「八の雷神に千五百の黄泉軍を副へて追はしめき」と記されています」
「せ、せんごひゃく? そんなのと戦わなくちゃいけないのか・・」
「千五百とありますが、実際の数ではありません。 大勢いるという意味です」
「そいつらは強いのか?」
「半分ブッブーだったのは、強さではなくて、それだけの数を相手にする体力は、誰にだってないってことです。 もちろんこのわたしにもです」
ウズメの衝撃的な告白で、俺の気持ちは一瞬でどん底に沈む。
「だったらどうすればいいんだ。 教えてくれ。 俺はなんとしても妹を助けてあげなければならないんだ」
「タケルさん。 もうひとつだけ、話していないことがありました」
「なんだよ。 この上まだ新手の敵でもいるのか」
「違いますよ。 味方の話しです」
「それを先に言ってくれよ。 その味方って、もしかして強いのか?」
「あなたの妹さんですので、ただの素人ですけどね」
「えっ、木花が味方って。 おいっ! それっていったいどういう事だよ」
「今ごろ妹さんは、黄泉比良坂側から、黄泉の国へ侵入されているでしょう」
「なんだって。 たいへんだ。 木花が、木花が殺されてしまう。 どうしよう」
俺の顔から音を立てて血の気が引いていく。
「心配しなくても大丈夫です。 木花さんには、最強女神の一人である佐久夜比売が付いていますから」
「佐久夜? そ、それじゃ、木花は一人じゃないんだな」
次回、「黄泉比良坂の戦い」へ続く




