第7話国民衛兵隊
バスチーユは愛華ら民衆の手に堕ちた。愛華はそれまでかぶっていた鉄の仮面を脱ぎ捨て、監獄内の見張りのやぐらの塔によじ登って先端の見張り所についた。
そこにはすでに元長崎総督(現国民衛兵隊隊長)とヴァンデミエール元砲兵隊長、シャンポリオンが彼女を待っていた。
「一つの砦の主になった感想はどうです女神様」
「そうね。思ってたより狭いのねこの砦。バスチーユというくらいだからもっと広いものだと思っていたよ」
「新世界の人口の九割が小獣人ですからね。自然と建築物もそれに合わせた大きさになったのでしょう」
「前々から思ってたんだけど新世界ってアメリカのことじゃないの?」
「あなたの先代の女神さまが作った世界がここ新世界。それより先に存在したのが旧世界です」
「それより先ってまたあいまいな概念ねぇ。どうして先に存在したってわかるの?」
「今年は何年?」
「二千…」
「新世界が生まれてからまだ五百年程度しかたっていませんだからそういうわけなのです」
国民衛兵隊隊長が手を叩いた。本題に入ろうといった。
「絶対王が今、軍隊を招集してるようだがうまく言ってないらしい。どうやらここがわれらの手で落としたという事実が地方に広まるにつれ農民の反乱を掻き立てる効果があったらしく地方長官はその対応にてんてこ舞いらしい。そこで、この後我らはどうするかここで意見をまとめておきたい」
「ここにこもっても何も始まりません」
「問題はこの籠城状態をいつ解くかだね」
「ここにはあまり食料もありませんし打って出るしかないでしょう」
「でも絶対王は戦が上手だぞ」
「戦上手ならここにもいるぞ」
「何気に戦じゃ負け知らず…いや、旧世界追い出されるときに巨人たちに負けたなぁ」
「この国民衛兵隊隊長が負けたのはその一回きりだ。十分戦上手と名乗れるだろう」
「いや、第一旧世界では戦らしい戦はあまりなかったような気がするのだけど」
「両世界の英雄の名を負う以上、戦上手ということにしてもらえないか」
「それを言い出しますと私なんて皇帝になっちゃうでしょう」
「え?どうゆう意味?」と愛華が聞いたのを、シャンポリオンが小声で答えた。
「ヴァンデミエール将軍ってナポレオンの別称です」
「ああなるほど。ところで手勢は何人?」
「おおよそ4万」
「勝てるじゃん!」
「でもほとんどが非武装の見物人で、いざとなってもあまり期待はできませんよ」
「しかも今年は不作で4万人のほとんどが飢えてしまっていますちゃんと食べてる絶対王の軍の前には草も同然ですよ」
「顧みるとみるほどこの戦い負ける気しかしないんだけど!私ちょっとおりたくなってきた」
「今更降りるってどこに逃げるおつもりですか。絶対王の性格上草の根分けてでも探し出されてさらし首ですよ」
「こもっても飢え死に、せめても勝算は無し。どっちに転んでも我らはすくわれない。ならばせめてほかの人のために死のう!」
「どういうこと?」
「われらで思いっきり派手な反乱起こして爪痕を歴史に残すんです」
「そしてのちの世の人間が同じ反乱が起こらぬように働きかけるでしょう。自然と第三階級の扱いが今よりましになる。われらが死ぬことでのちの多くの人々を救うことができるかもしれない」
「皆、覚悟はできたな」
「のちの民のために先駆けとなりましょう!」
その時であった。
地上から伸びたまばゆい光の柱が天を突いた。そして大きくしなりながら大地を切り裂き底の見えない巨大な谷を作った。
雲も大地も区別なく真っ二つに裂かれた。もしほんの数度角度が違っていたならばバスチーユといえど無事ではなかっただろう。
それを呆然と眺めていた愛華は。急に大量に吐血した。そして足を滑らせて見張り塔から中庭に落ちた。
「愛華!」真っ先に寄ったのはシャンポリオンだった。白かったワンピースが大量の血を吸って真紅に染まっていた。
それに続けて咳が出る。血も吐く。背中に大きな切り傷が広がりそこからも赤い体液がしみだしていた。
「一体全体愛華はどうしたんです?シャンポリオン先生!」
「大地の神と合体したのが裏目に出た。今の光の刃で大地は深く深く傷ついた。その害が愛華にも押し寄せたのでしょう」
「第二射が来るぞ!」誰かが言った。注目を集めたのは先程光の柱が立ち上がった方向。絶対王がいる城の方角にまた新たな光の柱が立ち上がった。
「どうやらあの光は天災ではなく王の武器だったようですね」
しかしその光はあっという間に細い光の筋になりはて消えてしまった。
「むやみに連射はできないと見た!今だ!国民衛兵隊諸君!城に攻め入るぞ!」
いうのが早いか国民衛兵隊隊長はバスチーユを出て城を目指し走りだした。
首都の町を通ると街の市民たちも国民衛兵隊に合流してお城に向かい始めた。今年は特に不作で首都の人々の台所はとっくの昔にすっからかん。そのため王の城に向かうという国民衛兵隊に合流して王にパンを分けてもらおうと動いたのであった。