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第3話嵐の中で輝いて

 窓の外は台風の暴風に総督府が弾力的にあらがっている光景が見えた。

 「今日一日は家の中でぬくぬくできるな」

 よし、二度寝するか。

 「タノモー!」

 覚えたばかりの数少ない日本語でシャンポリオンがやってきた。

 ロゼッタは基本シャンポリオンの管理下にある。小獣人と巨人の敵対関係の根深さは愛華には想像できないほど深刻なようで、女神の変身はあくまで小獣人のシャンポリオンが主導権を握っているという形にしたかったらしい。

 何はともあれ変身しない限りお互い会話すらできない。

 『内務省』

 「どうも女神様おはようございます」

 「外は台風ねさすがに今日は敵も動かないでしょう。敵、敵といえばなぜあなたたちは地方長官と戦ってるの?」

 「それは自由のための戦いです。もともと地方を治めていたのは小獣人の地方総督でした。今の長崎総督もその一人です。中央政府的には巨人が支配し、地方は小獣人が直に治める。これがかつて女神に世界が創造された時から延々と続く秩序でした」

 「その秩序を突然曲げたのが今の絶対王ルイノワールです。彼は地方を統治する小獣人の地方総督制を改正し、地方を統治する巨人の役職を据えたのです。その役職名こそ地方長官なのです」

 「いったい何のためにそんなめんどくさいことをルイノワール?はしたの?だってこれまで別に何かしら問題があったわけじゃないんでしょ?すでにあるものを否定したらあなたたちみたいに反発する人間が出てくるのはたとえやらずともわかるじゃない」

 「それは、私たちにもわかりません。実際に絶対王にあってをしない限り実のところ分かりません。でも我々にも一応見当はついています」

 「見当?」

 「ええ、彼が地方長官に任命したとされる巨人は今回の出来事で初めて公職に就いた者たちであります。おそらくそれこそ彼の目的。巨人の中間層に役職をばらまくことだったのではないかと我々は考えています」

 「でも、そのためにすべての地方総督を粛正したんでしょ?粛清って殺すって意味よね。余りにも残酷すぎません?」

 「新世界における小獣人の扱いなんて常にそんなもんですよ。事あるたびに巨人の思うがままに働かされて殺される。新世界の十分の九が小獣人で占められているというのに何者でもないかのように扱われる戦争のための重税に苦しめられる。だから我々は命を賭けてここへ来たのです」

 「なんだか暗い話になっちゃったわね。そうだ!思い出した!そもそもこんな台風の日にあなた何しに来たの!?」

 「そうですよ女神様!今日はこれを持ってきたんです皆さん集合です!」

 シャンポリオンに呼ばれてやってきたのは針金の女王冠だった。それから伸びる銅線は辞典ほどの大きさの装置につながっている。

 「これは」

 「夜間飛行用の電探です」

 「電…探…?」

 「光のない洞窟を飛ぶ蝙蝠は音の反射から空間を識別して飛びます。これはそれの凄い版です」

 「蝙蝠の…凄い版?」

 「ええ、すごくすごいです。頭にこの針金を、腰部装置を腰に身に着けるとあら不思議。あっという間に人間蝙蝠の出来上がりです」

 「針金の先端とがってて危ないんですけど」

 「脳に直接像をたたきこみますからね、このくらいしないと針が脳に届きませんよ」

 「待って!これ頭にさすっていったけど刺すの!?」

 「ええ、刺すの!」

 「やだ!あなた頭皮の汚さと脳の繊細さ知ってんの!?」

 「何か問題が?」

 「問題!超問題ですよこれ」

 こうして女神の強硬な反対にあって電探の即席改造が始まった。

 台風は昼には長崎を離れ低気圧に変わった。

 台風の後の澄んだ空気を思いっきり吸いながらプエブロに来たのは女神(仮)軟葉愛華である。

 窓から見える元運動場はすっかり小獣人が持ってきた作物と家畜、時々塹壕で埋まっていた。

 驚くべきは家畜の増殖スピード。プエブロに小獣人が越してきてから二か月足らず。彼らの食用虫は船に乗ってここに来たひとつがいからすでに玄孫の世代が現役だ。当初想定された家畜に必要なえさの量も指数関数的に増殖する食用虫を前に無残にも予定の変更を余儀なくされたのだった。

 プエブロの中に本格的に入るのも二週間ぶりだなぁと愛華は思った。

 プエブロの市民居住区、一階の中はなにやらお祭り騒ぎをしている小獣人でいっぱいだった。

 「なになに?何があったんです?」

 「あ、これはこれは女神様!初めての赤ん坊が生まれたんですよ!」

 「それはめでたいなぁ!ってちょっと待って!赤ん坊ってまだここにきて3か月足らずじゃない!妊婦さんの状態でこっちに来たってこと?」

 「三か月もあれば赤ん坊生まれるにゃ十分じゃないですか。なぁ!」

 「まぁ、小獣人としては普通だよね」

 あれ、小獣人三か月で増えるの?これは人口の増加に気を配らなきゃ大変じゃね?と愛華は思ったが口には出さなかった。

 「ま、めでたいことに代わりはないね。おめでとうございます!」

 「おい、あのこと女神さまに話さなくていいのかよ」

 小獣人の一人がもう一人の小獣人に絡んでいるのが認められた。

 「なになに?喧嘩はなしよ」

 「女神様それが最近巨人の集団がプエブロにやってくるんですよ。総督府に陳情出しても巨人との問題は女神さまがすべて行うとか言って相手にしてくれなくて…」

 「たかが200人しかいないのに行政特有の縦割り意識するんじゃないよ」

 「それは私もそう思うんですがねぇ…」

 「まぁ、分かりました。要は不良か何かがここを拠点に変なことやってるってことでしょう正直私不良苦手だけどおまわりさんに言ってここを警備をしてもらうように巨人の政府に言っておくね!」

 プエブロの二階から上は総督府兼官邸であった。三階と屋上は完全に軍事要塞と化していた。

 ぶつっと校内放送特有の異音がひびいたと思ったら愛華は呼び出された。

 『女神様、至急屋上にお越しください。繰り返します。…』

 いわれたままに屋上に来たらそこにはシャンポリオンと朝見た針金女王冠があった。朝のやつと変わって普通に頭の上に乗せるだけの様式のようだ。

 早速頭に冠を乗せて、腰に腰部装置をつけて側面にある開閉器を押すと…。

 「…」

 押すと…。

 「…」

 何も起こらなかった。

 「シャンポリオン」

 「目を閉じてください」

 「今回我々は間接的に脳に電探の信号を送る方法を開発しました。目を閉じてくださいすると第六の感覚が開いて電探の使用が可能になります」

 「そんな宗教みたいなこと言われても…」

 いわれるままに目を閉じるも何も愛華は感じなかった。

 「いや、なんか感じる。説明は難しいけれど、匂いのような味のような何かを感じる。果てしない空が広がっていて私は地面にへばりついてるそんな感じを感じっ。うっ…!」

 「女神様どうされました」

 「う、うえ、おえ、おろろろろろ」

 女神は衆人の前で昼に食べた中身を吐き出した。

 「第六感だ!第六感に体が付いてこずに反動が来たんだ」

 実験の成功に沸き立つ技術者とその光景にドン引きする軍人たちの前で思うがままに中身を垂れ流す愛華。

 そんな絵面が夕焼けに照らされて長い影を引いていた。

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