少女が長崎に戻るまで
愛華は列車一両程度の大きさの巨人用高次元潜航艇に乗って元いたこの長崎の地をまた踏むことができたことに感激した。
「やっと我々も旧世界に帰ってこれたのですね」
いつも通り愛華の体をよじ登り肩に足付けたシャンポリオンが言った。
「いやー、私の仮説が正しいものだったようでよかったですね」
「それな」と愛華は答えた。
というのもこの船が無事新世界を脱出して、高次世界の中を通って、旧世界のしかも地球上の長崎にたどり着ける保証はシャンポリオンの頭の中にしかなかったためだ。
ロゼッタを含む新世界の喪失された技術の中に、異世界間を通って行き来する船の存在があった。
ロゼッタに刻まれていた文書の中にその船と対応する個所を発見したシャンポリオンは学者仲間と一緒に船を求めて砂漠に旅立った。
そして過ぎた時間はおおよそ半年。地下を掘り進めて高次元潜航艇(通称太陽の船)がまた日の光にさらされた。
この後シャンポリオンが国際的、政治的課題や学者同士の確執、掘り出した船の価値を知らない現地人との摩擦などに四苦八苦した。
太陽の船の学術的な解析と同時に技術例証実験艦の建造が始まった。
構造は一般的な葉巻型浮遊商船を下地に太陽の船の機関部をそのまま移植。通常の浮遊機関も搭載。巨人が登場する空間を開けたら後は鉄板ですべてを覆って完成した。