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腐男子先生!!!!!  作者: 瀧ことは
番外編ボーナスステージ集 お礼に語りましょう
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その3【投票御礼】接触【&お知らせ】

「あっごめんなさい」


 騒々しい人混みの、スクランブル交差点で、動き出した、人混みにはぐれないように、手を伸ばした。自分の左側。

 特別に、おかしなシチュエーションじゃなかったと、思う。桐生はそう思っていた。手をつかむ瞬間に、一瞬ぴりっと、緊張したけれど、それは、ただの、自分の臆病さなんだろうって勝手に。


「ごめんなさい」


 もう一度、隣の朱葉が言った。桐生に。

 それからポケットからスマホを取り出して、握りなおした。早口に流行りのジャンルの話をして。


 手をつなぐのを拒まれた、のだと。


 ずいぶん遅れてじわじわと、理解した。




「おっそうかご臨終~」

 仕事上がりに呼び出した居酒屋で、ビールのジョッキをうちつけながら愉快な乾杯でもするかのように秋尾が言った。「俺は! 真面目に!」と桐生が言うと、「俺だって真面目ですよ」と秋尾が普段の桐生の口調を真似て言う。


「真面目に、馬鹿にしてんの」


 カウンターの下で、桐生が無言で秋尾の足を蹴った。


「いてえよ。なんなの? 家まで招いてリアタイ視聴だけしてやることなんもせず帰したのが致命的だったんじゃないの?」

「致命的じゃねえし。あとなんもなかったわけじゃない」

「高校生のお付き合いじゃあるまいし~」

「高校生みたいなもんですよ、ついこの間まで」

「そうやって子供扱いしてるから、つなごうとした手をふりほどかれるんじゃないの?」

「…………」


 黙った。これはおもいのほかこたえてるな、と秋尾は思う。まあ、だからといって、甘やかしてやる義理はないですけど?

 ないけれど、それなりに、長く落ち込んでいられるのも面倒なので。

 来る前から頼んであった、冷めたやきとりをかじって秋尾が言う。


「最近喧嘩したとかも、ないんだろ?」

「俺は、ない、つもり。確かにしばらくばたばたしてたけど……普通に、連絡はしてたし……」


 イベントにもいった。ライブにも、映画にも。

 毎日連絡はして。そういう、そっちの、進みは、まあ、ゆるやかではあるけれど。

 すごく、一緒にいるのが、普通になってきていた。

 だから、手をつないでもいいかと、了承をとらなかったのは、確かに自分の落ち度ではあるんだけれど。


「前はそんな、嫌がられた記憶はないんだけど……」


 前、のことを考える。

 秋尾はめんどくさげに相づちをうちながら電子メニューを眺めているので。

 確か、初めて手をつないだのは、意識して、してつないだのは、朱葉がまだ高校生の、コラボカフェでのことで。

 恋人つなぎの、モデルにするために、彼女の方から、

 モデルに……。


「ん…………?」


 小さな、ひっかかり。少し、考える。OKと、NGの、間の。観察と、考察。

 なんとなく、わかった気がした。

 誰に自慢をするわけでもないけれど、彼女のことは、よく見ているのだ。




「今それで、WEB投票やってるわけじゃないですか」

「いれたもういれた全力でいれたノミネートだけで晴れがましいけど俺の熱い思いっていうのは百字というちんけな文字数制限ではおさまりきらないのでお願いだから票を金で買わせて欲しい」

「金で買う票」

「違う。愛に貴賤がないなら数字化される愛もまた美しいはずなんだ……!!!!!」

「あっ先生この本2巻出るって。今twitterで」

「今すぐ予約しよう。今日しよう今しよう。愛はスピード」

「まだ書誌情報出てないのでは……?」

 そんな会話をしながら、郊外の大型書店でカゴで買い物をして、レジを済ます。朱葉はビニール袋だったが、桐生は紙袋だった。それも、いつものことだ。


「持つよ」


 朱葉の持ったビニール袋を、自然な様子で受け取ると。

「ん」

 朱葉のあいた左手に、右手を差し出した。


「………………」


 朱葉は何かを言おうとして、それからためらい、口を閉ざし、その手を取る。駐車場に向かいながら、桐生が穏やかに聞く。


「そんなに、嫌?」


 かすかに笑みさえ浮かべて。


「右手」


 朱葉はしばらくぐっと言葉をこらえていたが、「だって~~」と情けなく眉尻を落とした。朱葉も、気にしては、いたのだ。反射的に、手を、振り払ったこと。

 自分の右手をぷらぷらと振って、朱葉が言う。


「ひどいんですよ、たこ。ほんと、ガサガサだし、固いし、すぐ皮むけるし……」


 手を、つなぎたくなかったわけでは、なくて。


「しかも、この間は、スプレーで湿布までしてたから……ほら……においとか……」


 修羅場と、レポートもたくさんあって、とぽつぽつと言い訳をもらす。

 手をつなぎたくなかったわけじゃなくて、右手が、嫌だったのだ。

 そっと、耳元に唇を寄せて、桐生が言う。


「俺が、『それ』が特別好きなの、知ってて言ってる?」


 ぱっと、暗がりの中でも、朱葉の耳元が赤くなるのがわかった。本当に、朱になる葉のようだった。


「知ってて! 言ってる!!」


 照れを誤魔化して、大きな声で。


「なんか、そういうこと、言われそうだから、言いたくなかったの……!」


 女子の気持ちは、複雑で。

 けれどそれを、笑って受け止める、男の方だって、取り繕っているだけで、別に、大人でもなんでもない。

 いつものように、運転席と、助手席に乗り込んで。


「ん」


 改めて、左手を差し出したら。


「………………」


 ゆっくり、朱葉が右手を、重ねてきたので。

「…………」

 朱葉のそれよりも、長くて太い、指が、包み、なぞる。指の股から、関節と、その、かすかな凹凸まで。

 薬指の、シンプルな指輪が、どこか誇らしく。

 ゆっくり手を引きよせると、軽く指先を唇にあて。



「確かにかなり、興奮する」



 そう呟いたら、いよいよ朱葉は赤くなって、叫ぶ。


「右手は!!!! 禁止です!!!!!!!!」


 そうかー残念だなーと笑いながら。

 ごめんなさいって言われるよりも、ずっといい、と桐生は思った。

色々あって!!!!! 今回はこんな感じで!!!!!!!!!!

また、活動報告と!twitterでくわしくおしらせしますけど!!!!

>>>>>書籍化の2巻が出ます!!!!!!!!!!!!!!!<<<<<

お待たせしました!!!!! ありがとう!!!!!!!!

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