闘いの灯火
―――分かってんのかお前らァ!!!
2匹のペットは、正座で飼い主様の怒号を受け止めていた。
ザッザッザッ
「まずい。奴らだ。隠れてろ」
トトはそう言うと、すぐさまマスターの定位置についた。
カランコローンコローン
「どうもマスター」
「お話よろしいですか」
紺色の制服に身を包んだ男2人組が酒場にやって来た。
トトの友達…と言う雰囲気ではない。
「例の獣人の件でお話が」
「またその話か…。毎回言っている通り私は何も知りませんよ」
「いえ、この酒場の方へ獣人が向かっていったとの通報がありまして」
「ここをお調べしてもよろしいですか?」
トトと男達の会話が聞こえる。
獣人の件…? 通報…?
確かにこんな化け物を見たら通報もするよな。
するとあいつらは警察か。もしかしてこれってすごくまずい状況なんじゃ…
こんなことを考えていると、茶色の腕に掴まれた。
物凄い力で引っ張られ、床の下に引きずり込まれた。
真っ暗なトンネルを落ちていくと、下に微かな光が見える。
「うわぁああああああああ」
ダイナミックに尻餅をついた。
ガルーに殴られた時の痛みがまたぶり返してくる。
ガルーがひそひそ声で言う。
「馬鹿野郎…大きい声を出すな……ここは隠し部屋だ。奴らに見つかることはまずないだろう」
蝋燭の火が辺りを照らしている。
とても薄暗く、ほこりっぽいが割と広さはあるようだ。
目が薄暗さに慣れてくると一つの写真立てを見つけた。
写真にはムキムキの男達が写っていた。
「もう、ここにいるのも限界だな…」
ガルーの言う通りだ。
確かに、いくら隠し部屋だろうと、警察の奴らに見つかるのも時間の問題だ。
でも、他に行く宛などあるのだろうか。
………鼻がムズムズしてきた。
狼の優秀な鼻には、ここのほこりっぽさは辛すぎる。
はっ……はっ…ハックション!!!!! ゴツン!!!
―――何か聞こえませんでしたか今?
「そうですか?気のせいでしょう。そろそろよろしいですかねえ。お客様が予約されてる時間なもので」
「ええ、すみませんでした。それでは」
カランカランコロコローン
「ふぅ…」
「そろそろここも限界みたいだなトト」
「まあな。でも限界っつったって他に行く宛なんかないだろう」
「行く宛は確かに無いが…"同胞"はできたし、そろそろここを出るとするよ」
ガルーとトトに、勝手に話しを進めないで貰えます?って言いたいのは山々だったが、確かにここにいてもいつかは見つかってしまう。それよりは、外へ出ていった方がいいのかもしれない。
しかし、なんでこんなことになったのか。
俺は人間として普通に暮らしていた筈なのに、なんでこんなめんどくさいことになったのか。
「よし、俺にいい案がある」
トトが言った内容はこうだ。
俺が元々いた森は街の内部にある森で、その森の近くにこの酒場がある。
森から酒場までは人から見つかりづらいが、ここから街を抜けるには、人に会わずに抜けることは不可能だそうだ。
2日後にこの街で祭りがある。1年に1度の盛大な祭りだ。
その祭りでは街の人々が仮装をして過ごす。
それを利用して、怪しまれずにこの街を抜け出す。
「とりあえずその祭りとやらまでは、ゆっくりするしか無さそうだな。カミオ!!酒は飲めるか…?」
そんなに飲めないって言う俺の言葉をガルーが聞く訳もなく、アホほどお酒を飲まされた俺は、気絶するように床についた。