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月を見ずして、オオカミ男  作者: 部凛々 安人
1/7

産声

静かな月夜の森の奥。耳を済ますと、


ワウゥーーーーゥ!!!!!

と、鬼気迫る咆哮が聞こえる。


ズガッ!!! ガガガァン!!!!!

何かをきりつける音。二つの光が鋭く輝く。


ガァアアアアアァァ!!!!!

襲いかかる灰色の獣は鋭く睨んでいる。

だが、その眼は何も見えてはいなかった。見ようとしていなかった。

獣は立ち上がり、刃物のように尖った爪を突き立てる。


ドン…!!!

鈍い音が静寂に響き、灰色の獣が横たわる。


―――目は覚めたか。


眼に鋭い光が突き刺さる。

森はいつの間にか、夜が明けていた。

彼は思った。

いつから自分は森に居たのだろう。いつからこうしていたのだろう。

―――自分は何者なのだろう。


彼は飛び起きる。

その眼前には、木漏れ日に照らされた荒れた木々と、

帽子を被る茶色の獣がいた。


「お前は誰だ」


声にならない声が森に響く。


「落ち着け。落ち着かないのも無理はないがな。」


茶色の獣が喋った事に驚いたのもつかの間、自分自身の手が灰色の毛で覆われていることに気づく。

心臓の大きな鼓動を尻目に、とりあえず一旦落ち着くことにした。


目が覚めてからどれほど経っただろう。

2人は、いや、2匹はお互いに喋ることはなく、小鳥の囀りに耳を傾ける訳でもなく、淡々と時が過ぎていた。

心臓が動いていることも意識しなくなっていた時、片方の獣が口を開く。


「な、何者なんだお前は…!!」


茶色は答える。


「おれも分からなかった。最初はな。」

「たまたま昔からの知り合いに出会って、思い出したんだ。…自分が人間だったってことを。な。」


心臓が再び強く鳴り出す。

太陽の光が雲に隠れて木々に色が付いていく。


「…俺も……人間だった…!!」「この森の向こうにある、あの街で…暮らしていた……」


心臓の音が張り裂けんばかりに強く、強く鳴り響いていた。

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