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此方コールセンターですお客様如何なさいましたか?

作者: 英心

思い付きの発想を形にしてみました。プロットも監修もしてしていない走り書きの様な話です。続けられたら面白いかなと思って試しに発表しました。目に留まって読んで頂いたなら、辛口・甘口評価を頂けると嬉しいです。


 清涼感が在る広い室内。部屋の大きさの割にデスクの数は少ない。此処がオフィスだと言っても信じる者は少ないだろう。ただ、この部屋は部屋の雰囲気とそぐわない物がデスク以上に有った。


『プルルプルル♪』『プルルプルル♪』


 音が鳴り響くと一人の若者が行動を開始した。


「ハイ。此方コールセンターです。お客様どうされましたか?」

「あぁあのダメなんです。全く効かないんです!」


 電話の相手は既にテンパっているご様子。意味不明な状態を叫び続けていては、此方も対処の仕方が判らない。


「大丈夫ですよお客様。この電話が繋がっている間は時間はフリーズしますので、安心して下さい」

「本当?それ本当ですね!?」

「ハイ……先ずは深呼吸致しましょうか。吸って~吐いて。吸って~吐いて」

「……有り難う少し落ち着きました」

「では、どういった御用件でしょうか?」

「あぁ!そうでした。今、突然魔王が現れて戦闘に成ったんです。どうして魔王がイキナリ現れたんでしょう。僕の仲間も皆驚いて戦闘処じゃ無いんです」


 コレは最近起こる事故のパターンだと電話口の男は思った。新米ユーザーが雇った道案内人がルートの右と左を間違えるケースが最近多発してると社内掲示で連絡が在った案件だ。それでも確認を取る為、彼は電話口の向こうでオドオドしてる顧客に確かめて見る。


「お客様の所属とお名前をお聞かせ下さい」

「所属?あぁ世界ですね。ゼッペル世界の『ダイチです』」


 男はすぐさま手元のキーを叩きマルチスクリーンを見詰る。有った!ゼッペル世界・勇者ダイチと仲間達……前回の問い合わせは三日前。三日前の内容と現在魔王と鉢合わせ。完全なルートミスだと確信した男はヘッドセットのマイクを作動させ電話口のユーザーに話し掛ける。


「お客様如何やらルート選定のミスの様ですね。確認ですが勇者ダイチ様のレベルは御幾つでしょうか?」

「えっと今53です。昨日の夜53に成りました」

「やはりルートのミスですね。今の状態ですと逆立ちしてもお客様一行では魔王を倒せません」

「えぇ~!其れじゃどうすれば良いんですか!?助けて下さいお願いします」


 此処はコールセンターで在って救済センターでは無い。本来ならばこの電話は此のまま救済センターにタライ回しにして彼の業務は終了するのだが、相手の悲壮な声が男の耳から離れなくなってしまったのだ。


「本来ですと救済センターへお繋ぎするのが規則なのですが……私の独自の判断で勇者ダイチ様一行を三つ前『カナトス』街へ緊急転送致します。宜しいですね?」

「三つも前ですか!?其れは大きなロスだな」

「でわ、このまま救済センターお繋ぎ致しましょうか?」

「否!待って。其れだと大夫待たされるんですよね!?」

「この時間ですと他のお客さんからの問い合わせも多いですから、私の口からは何とも……出来るだけ急がせては見ますが」

「判りました!三つ前でも十個前でも構いません。仲間が、恵子ちゃんが危険な目に合わないなら戻して貰って結構です。お願いします」

「PTメンバーをダイチ様の廻りに集合して頂いて皆さん手を繋いで下さい」

「……しました!」

「最後に僭越ながら現地案内人は解雇をお勧めいたします」

「ですね!解雇処か払ったお金以上の罰金を請求してやりますよ」

「それでは準備が整いましたので、緊急転送を行います。御利用有り難う御座いました。勇者様の御活躍を願い、またの御利用が無い様社員一同お祈りいたします」


 赤い緊急ボタンを操作すると『プッツン』と回線は斬れた。マルチスクリーンで信号を追い続けると、現在地から500K離れた『カナトス』の町に信号が点滅するのを確認する。メンバーの数も五つ。誰一人欠けては無い様だ。コレで男の役目は終わった。新米勇者も気を引き締めて冒険を続けてくれるだろう。男はそう思いつつ壁に掛けられた時計を見詰る。時の針は丁度2時を指している。休憩タイムだ。そう思って男は自分の席を立ってリフレッシュルームへ向かおうとした。


「喜一君。さっきの一部始終見てたわよ」


 声を掛けて来たのは、いつも濃いグレーのペンシルスカートのスーツに身を包んだ女性『明菜』彼女は此のコールセンター特別室の主任チーフであり喜一の二つ上の上司に当たる女性だ。同僚や先輩女性達皆から憧れの女性だ。チョッとはスキーボイスだけど、それがまた良い!当然喜一も憧れる素敵なお姉様である。そんな彼女が喜一に話し掛けて来たのだ。


「さっきの対応は間違ってましたでしょうか?」

「本来なら……稟議書モノだけど私は正しかったと思うわ。此処はコールセンター。私達は異世界で活躍する勇者一行の相談係りだけど、君のさっきの行動は良かったと思う。新人君で如何かと思ったけど、これからも頑張ってね」


 彼女はそう言うと、右手を肩に掛けるのではなく喜一の左の頬にそっと手の添えてニコリと微笑んだ。自分でも真っ赤に顔が染まるのが判った。恥ずかしい!女性に頬を触られただけで赤く成る自分がチェリーボーイだと気付かれるのが恥ずかしい。周囲に沢山いる女性スタッフに笑われるのが恥ずかしい。自分が明菜女史に憧れているのがバレるのが恥ずかしい。と彼は慌てる。

でもそんな事お構いなしに彼女は踵を返し喜一の傍から去って行く。


「ハァーッ」


 呆然と立ったままの姿勢で喜一は大きなため息を吐いた。


「喜一君見てたわよ~。明菜さんと話をするなんて羨ましいわね~♪」


 茶々を入れて来たのは喜一より二つ年上の先輩職員『結衣』だ。この娘は喜一より5センチは背が高い。ヒールを履けばさらにその差は広がる。顔は綺麗と言うより可愛い感じ。年上だけどその可愛さが久しさを感じさせる。彼女や明菜ばかりかこの部署に居る女性達は皆綺麗だったり可愛かったりスタイルもモデル並みの人達ばかりだ。正確に言えば喜一の他に男性は一人。ソイツは常務取締役なので普段この場所に居る男性は喜一一人なのだ。特に金も無く学歴も低く顔の造りは並だけど、男手が無いと言う事で彼に話掛けてくれる女性は多い。


「ねぇ~喜一も休憩でしょ。一緒に行こう」


 大胆にも結衣は喜一の左手を取ってリフレッシュルームへ誘う。

言えない!他の部署で働く仲間達にはこんな話は聞かせられない!見せられない!そんな事をしたら明日の朝には海に沈められえるだろう。でも自慢したい!今の職場がどんなステキな花園なのか全世界の男性達に大声で叫びたい。


「さっきの喜一の電話ってさ、現地人のミスだよね!?」

「だと思う。レベル53で魔王と出会うなんて考えられないからからね」

「うわっ!其れは酷い。事故だね人災だね!実は私も昨日受けた内容が現地人と勇者のトラブルだったんだ。最近多いよね」

「三件、四件処じゃ無いって話よ!」


 結衣との話に割り込んで来たのは先にリフレッシュルームに居た『彩』だ。歳は今年26歳ロングヘアーに軽くカールが掛かってる髪が自慢らしい。良く髪をサラーって流すのをビルの入口で見かけてる。だけど、他の会社の男性陣も彼女の綺麗な髪よりも両手でも余る程大きな胸の膨らみに視線が釘付けだとは、ナイーブな喜一の口からは口が裂けても言えない。


「そうなの!?異世界で何かトラブルが在ったのかな?」

「さぁ~どうだろう!?相談係りの私達ではどうしようも出来ないし、勇者達には悪いケド対岸の火事よね」


 目の前に芸能人張りの美女が警戒心無しで話をしている。此処は社内でもリラックスする為に設けられた室内。彼女達だけ見ていれば、ガールズトークの中にお邪魔してる気分なのだ。

独り抹茶ラテを啜りながら目の保養を楽しむ喜一。当然話の内容なんて耳には入って来なかった。


「……ねぇ!聞いてる?ちゃんと聞いてよ!」

「えっ!何ゴメン。御二人の綺麗な顔に見とれてて……話聞いてなかった」

「ば、馬鹿じゃない!リフレッシュルームだけど、此処は職場よ!口説くなら違う場所にして……よね」

「フフッ。結衣チャンも形無しね。それより高橋君て想像通りの天然ジゴロね」


 ジゴロ何て本の中でしか知らない台詞だ。其れに俺なんかがジゴロだなんて烏滸がましいと喜一は思う。


「君本当にそう思ってるの?自分の魅力に気付いてない?それともワザと?」

「ワザとだなんて!大体俺なんか三流大学在学中だし、貧乏暮らしだし顔だって平均以下だし。モテ期なんて感じた事も無いですよ」

「コッチの部署に移って給与貰ったよね!?」

「ハイ。一度振り込まれました。金額見て驚いて経理に確認したら本当だって知って更に驚いて、怖くてそのまま定期にしちゃいました」

「あははっ、うける~、でも!其の堅実性と君の素朴さが良いのよ!知ってたウチの部署。扱う案件が秘匿義務が高いでしょ。うっかり彼氏に漏らしたら即クビよ。オマケに記憶まで彼氏と共に消されるって噂なんだから」

「「ええぇ!」本当なんですかその話!?」

「らしいわよ。まぁ~噂の域は出ないケド。古株は皆そう思ってるわ。だ・か・ら簡単に私達は恋愛できない訳。お金は腐る程有るのにね」

「だから皆休みになると海外ブランド漁るのよね~」

「そこに!突然彗星の様に一人の男の子が現れた。素朴で純情そう。オマケに誰の手も掛かって無い純白なチェリーボーイと成れば、狙ってるライバルも多いのよ。少しは自分の資質に自信を持ちなさい」


 姉御肌の『彩』にそう言われると恥ずかしさが急上昇する。職場の女性達がそんな目で自分を見詰めていたと知った喜一はこれからどんな態度で仕事をすれば良いか戸惑ってしまった。


「バカね~喜一は、そのままが良いの。良い!急に変な方向に変わらないでよね。それより、さっき聞いた事どうなの?」


 聞いたと言われてもコッチは聞いてなかったから内容も知らない。怒られながらも結衣に再度話を聞かされれば、何の事は無い。今日の上り時間とその後の予定を聴かれただけだ。


「えっと六時上がりですね。その後は何時もの用意予定は無いですよ」

「決まりね!今日は三人で飲みましょう。彩チャンも行けるでしょ!?」

「当然よ。お近づきに成れるチャンスだもの結衣チャンだけに独占させないわ」


 有無を言わさず予定が組まれる。強引な進め方は結衣の何時もの行動だ。彼女と話を始めてした時もこんな風に一方的に進んだっけと喜一は思い返す。


午後六時。提示を迎え喜一は使ったデスクを綺麗に片づけ職場を出た。引き継ぎの担当者に『勇者ダイチの動向を監視して』とメモを残し彼は会社が在る高層オフィスビルの一階ロビーで結衣たちが来るのを持って居た。


「喜一!喜一じゃないか!?久しぶりだな~元気にしてたか?お前が急に配置転換に成って、俺達驚いてたんだぜぇ。で、如何だ?新しい部署に少しは慣れたか?」


 シマッタ!この時間は此方も仕事上がりだった。内心戸惑う喜一。話し掛けて来たのは、共に大部屋で仕事をしていた仲間達だ。ちょっと大学を自慢し親の裕福さを鼻に掛け同世代の女性達と仲が良いのを自慢してた連中だ。正直以前の喜一なら住む世界が違う住人と割り切って居た。雅かロビーで出会うとは……すっかり存在すら忘れていた連中と鉢合わせた事を呪う喜一だった。


そこへロビー中がザワザワと騒ぎ出す。五月蠅い小蠅共も騒ぎに気付き振り向く。

 春色の明るいパステルグリーンのワンピース。ふわりとスカートが靡き歩く姿は視線を釘付けにするのは『結衣』だ。シックな色合いにワイルド系のデザインが大きな胸の膨らみを更に強調する服を着こなして歩くのが『彩』だ。二人は迷わずコッチへ歩いて来る。当然小蠅である元同僚達は開いた口が塞がらず呆然と彼女達に視線を釘付けだった。


「お待たせ喜一」

「あぁ~否全然。気にしないで」

「此方は知り合い?」


 ワザと『彩』が小蠅共の存在を訪ねて来た。


「えっと前いた部署の仲間達だよ」

「あぁ~大部屋の……皆さん私達と同じ職場って事ですね。互いに頑張りましょうね。じゃ~喜一君行こうか」


 『結衣』も『彩』も今日は高めのヒールを履いて居る。喜一を両脇から挟み見せつける様に二人は腕を絡ませてきた。『地球人に連れられる小人の宇宙人』確かそんなシーンの白黒写真が在った気がする。雅か自分がそんな扱いをされるなんて思いもしなかった。


「フフフッ。実はエレベーターの所で、ずっと見てたんだ。彼奴いい気味よ!私の喜一も馬鹿にするなんて百年早いのよ」

「コラ~私のじゃなくて私達のでしょ!」


 もう喜一は何も言わない。何を言っても通用しないと諦める。この後何処に連れて行かれるかも知らないが、俎板の鯉は為すがままに従う他道は無いと悟った。



 昨夜の記憶は殆どない。目が覚めれば見知らぬ部屋で寝ていた。ゴソゴソと動けば人の気配が感じる、振り向けばスッピンの『彩』が大き目の白いYシャツ姿一枚で『おはよう』と声を掛けて来た。置かれた状況を飲み込めずフリーズする喜一。追い打ちをかける様に更に聞き覚えるの有る声が彼の耳に届いた。


「何!?何で二人とも早いのよ?まだ朝の9時前でしょ」


 此方は大き目のTシャツ姿の『結衣』だ。二人とも裾から映える生足が悩まし過ぎる。スッピンもバシッと決めた化粧顔に負け児劣らず綺麗な顔をしていた。


「あぁ~おはよう。ゴメンね起こして悪いケド、コレから俺学校なんだ」

「そっか喜一君学生だもんね~朝ご飯どうする?」

「コンビニでなんか買って行きます」

「そう。じゃ後で会社でバイバイ~」


 陽気な『結衣』とちょっと大人気分の『彩』に見送られ喜一はどちらの部屋か判らないままマンションを後にした。この後自分の位置が判らずプチ迷子になったのは言うまでもない。


「どう思う?」

「取敢えず第一段階の作戦は成功ってことかしら」

「だよね~。フフッでも見た!?」

「うん。喜一君、私達の生足に五分は釘付けだったね」

「あぁ~この次は、いつかな~。早くチャンスが巡って来ると良いケドな」

「結衣ちゃん!出来る女はチャンスを待つんじゃ無くて自ら作るモノよ」

「そっか!判った。彩チャン。当面は共同戦線だからね」



 夢か幻かそれとも陸地の竜宮城か……度善の授業が見に入らなかった事を反省しながらも今朝の出来事を思い返す喜一。すっかり二人の美女の姿が焼き付いてしまった純情青年。コレからの仕事に支障をきたさ無ければ良いのだが……。



「最近、各所のユーザー様から救済コールが多発しています。此方の部署はあくまで相談窓口ですので越権行為は控えて下さい。ですが!相手は異世界を守る勇者御一行である事も事実です。何かが在ってでは遅すぎます。各自の迅速な判断と行動が、勇者様一行更には異世界全土を救う結果にも繋がるでしょう。更なる警戒とサービスと皆さんの心休まるお言葉を投げ掛けて下さい。勇気と元気と希望と信頼を与えて下さい。異世界に飛ばされただけで無く私達がキチンと見守ってフォローしてると伝えて下さい。では本日も頑張ってクレームが無い様に働いて下さい」


 珍しく工藤常務がフロアーに顔を出した。最低限の職員を残し全員を集め訓示が発令した。どうやら昨日、話にあった異世界で何かが起こってるらしい。それでも喜一達スタッフに出来る事と言えば、連絡をくれる勇者達ユーザーに的確なアドバイスを与える事と状況判断だ。喜一達の動きが異世界を救う。そう信じて彼等は今日も鳴り響くコールサインにに気を遣う。


「此方コールセンターです。お客様どうされましたか?」




如何でしたか? 感想お待ちしています。

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